堀木工所の珪藻土バスマットの断面。植物繊維が多数見える
堀木工所の珪藻土バスマットの断面。植物繊維が多数見える
市販されている珪藻土製品(本文とは直接関係ありません)=東京都内
市販されている珪藻土製品(本文とは直接関係ありません)=東京都内

 中国で製造された珪藻土(けいそうど)のバスマットやコースターから、健康被害のおそれがあるアスベスト(石綿)を含む事例が相次ぐ。珪藻土製品からなぜ、石綿が検出されるのか。その真相に迫る。

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「過去に見たことのない数です」

 厚生労働省化学物質対策課の担当者が驚愕(きょうがく)したのが、家具大手のニトリホールディングスによる珪藻土製品の自主回収だ。石綿の検出で、対象は355万個超に上った。

 ニトリだけでなく、ホームセンター大手のカインズが販売していた珪藻土のバスマットやコースターなどからも、労働安全衛生法(安衛法)の基準を超える石綿が含まれていたとして、自主回収の発表がとまらない。

 石綿は、髪の毛の5千分の1というきわめて細い繊維状の鉱物。熱や摩擦、酸、アルカリに強く、耐久性も高いため、過去に約1千万トン輸入され、工業製品や建材などに使用された。ところが、発がん性がきわめて高く、吸ってから数十年後に中皮腫などを発症する場合もあるため、「静かな時限爆弾」と呼ばれる。

 日本では2006年9月、重量の0・1%を超えて含まれる製品の使用や輸入、販売などを原則禁止。しかし、過去の石綿使用により、中皮腫だけでも毎年1500人超が亡くなっている。肺がんなどを含めると年間2万人超が死亡していると推計されている。

 そんな危険な発がん物質が、吸水性の高さと手入れの容易さで大人気となっている珪藻土バスマットやコースターに含まれていた。しかも、製品の吸水性が悪くなったり汚れたりした場合、紙やすりで表面を削る手入れが推奨されている。ニトリのバスマットは「お手入れ用」として紙やすりがつけられていたほどだ。

 手入れで表面を削ることで石綿が飛散し、それを吸ってしまうおそれがある。細かな粉じんとなった目に見えない石綿は再び飛散しかねない。こうした製品を削る作業は、本来ならば新型コロナウイルス対策よりもさらに高性能な防じんマスクの着用などが義務づけられているもの。そんな危険な作業を子や孫が手伝ったり、そばに居たりすれば、知らない間に石綿を吸って将来の発がんリスクを抱え込んでいる可能性があるのだ。

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