国会でさまざまな疑惑の答弁に追われる菅首相(C)朝日新聞社
国会でさまざまな疑惑の答弁に追われる菅首相(C)朝日新聞社

 東京・表参道の土地の持ち主になりすまして法務局で所有権の移転登記をしようとしたとして、警視庁捜査2課は11月12日、有印私文書偽造・同行使などの疑いで、都内に住む職業不詳、三木勝博容疑者(65)ら地面師グループの男3人を逮捕した。土地の売却を持ち掛けられた不動産会社は購入代金として数億円を男らに払っており、警視庁は詐欺容疑でも捜査する。

 実は三木容疑者こそが本誌(11月20日号)が報じた菅義偉首相と深い関係にある有力後援者A氏の神奈川県有地の転売疑惑に関わっていた人物だ。

 この転売疑惑は国会でも取り上げられた。菅首相の地元、神奈川県在住の有力後援者A氏は横浜市の県有地を2015年に「格安」で取得。転売禁止を破って、第三者に土地を売却して約2億円の利益を手にしていた。A氏は保育所を建設するなどとして県有地を異例の随意契約で手にした。「10年間の転売禁止」条件が付けられて売買されたが、すぐに県有地は転売された。当時、随意契約が認められた理由の一つは、県有地の隣接地をA氏が2006年に取得していたことだった。A氏に隣接地を売った人物こそが、三木容疑者だったのだ。

 A氏が菅首相と深い関係があることもこれまでに明らかになっている。A氏は菅首相の政治資金管理団体「横浜政経懇話会」などに対し、2007年まで計340万円以上を政治献金。関係はそれだけではない。菅首相は2007年、事務所費問題が持ち上がった。菅首相が代表を務める自民党神奈川県第二選挙区支部や政治団体は、菅義偉氏が所有する横浜市内のビルが所在地になっているにもかかわらず、事務所費を計上していたとして問題化。同年11月にはA氏が菅首相からそのビルを購入。本誌の調べでは2008年から4年間、菅首相の地元事務所はA氏の会社が所有する物件に家賃を支払っていた。

 今回の逮捕で三木容疑者は「職業不詳」とされている。だが、A氏に神奈川県の県有地の隣接地を売った時は、東京都で不動産関連会社をいくつか経営する不動産ブローカーだった。警察当局などが問題視するのは、A氏の背後にいた三木容疑者と反社会的勢力の関係だ。

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反社会勢力の不動産ブローカー