女性はトイレに行くと言って、知り合いの弁護士にショートメールで相談した。その記録には、こうある。

「聖路加の牧師に、セクハラで逃げたい。マッサージとか頼まれ、体力的にも無理。助けてください」

病院の中の一室で5時間拘束。お薬と水を求めて、解放してもらいました。気持ち悪く、疲れ切っています」

 当日夜、ショートメールをした弁護士に電話したがつながらず、性暴力・性犯罪に対するNPO法人の相談窓口に電話を入れたという。女性は振り返る。

「被害を受け、何とか家にたどり着いて、すがる思いで電話したんです。でも、説明しても、あまりよい対応をしてもらえず、私はさらに動揺してしまい、被害なのかどうかさえわからなくなりました」

 17年5月22日には、2回目の被害を受けたという。訴状にはこうある。

<被告(チャプレン)は原告の身体を持ち上げ、細い机の上に座らせた……原告の着衣やブラジャーをたくし上げ……>

 女性によると、病院の待合室で休んでいたところ、牧師が近づいてきて「お話ししましょう」と声をかけてきたのだという。女性が「お話はします」と答えたところ、前回の控室とは別の旧館2階にある「プライベートルーム」に案内された。女性は前回、各所に相談しても「証拠がない」と取り合ってもらえなかったので、途中から牧師とのやりとりを録音したという。

 女性は18年1月、警視庁築地署に相談し、被害届を提出。同年9月、男性は強制わいせつの疑いで書類送検されたが、同年12月、東京地検は嫌疑不十分で不起訴処分にした。

  女性と代理人弁護は提訴後の11月2日、都内で記者会見を開き、不起訴処分になった理由についてこう述べた。

「暴行脅迫がないと、強制わいせつが認められないとなっている。本件では、女性が机の上に持ち上げられるという外形的な暴行もあったと思っているのですが、そこが不十分だというふうに警察は考えたのかもしれません。もう一点は、被害者の同意があったというふうに、誤解したというふうに被告本人が言っているんだろうと思います」

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女性が録音した記録