バビット=2018年12月撮影、グランデファーム提供
バビット=2018年12月撮影、グランデファーム提供
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 9月21日のGIIセントライト記念(中山競馬場)で悠々と逃げ切り勝ち。通算獲得賞金を1億1368万円にしたバビットが話題を呼んでいる。

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 昨年の競りに出されたときの落札価格は500万円(税別。以下同)と異例の安さ。同レースでの2着馬は1億6500万円で、同世代には5億8千万円の馬もいる。

「取材は苦手なので」と断る宮田直也オーナーに代わり、浜田多実雄調教師が説明する。

「オーナーと一緒に競り場に行ったところ、『この馬が欲しいから見てほしい』と頼まれました。欠陥はあったんです。上アゴが出ている出っ歯なので、操縦性に影響が出ることがあります。でも、動きは悪くなかった。なぜ気に入ったのか聞いたら、オーナーは『直感ですよ』と。厩舎(きゅうしゃ)に入った頃から前向きさが目立っていました」

 この馬を売ったのはグランデファーム(北海道浦河町)。主に1歳の馬を購入し、1年間かけて育成し販売する育成牧場だ。天皇賞馬ヒルノダムールなど4頭のGI馬が輩出している。衣斐(いび)浩代表は、

「800万円以上で売りたかったんです。でも『500万円』の一声の後、全く続かなかった。その頃、ソエ(前脚の骨膜炎)が出ていたので抑え気味に走らせたからかもしれません。そういえば、この馬を競りで買ったときも、うちが最初に『150万円』と言ったら後が続きませんでした」

 バビットの父ナカヤマフェスタは、世界最高峰レースの仏凱旋門賞で2着に入った名馬。しかし、産駒(さんく)は激しい気性が災いし活躍せず、重賞を勝ったのはガンコ1頭だけ。その血統が嫌われたのか。

「私は気にしませんでした。気性は環境で変わりますから。バビットも最初の頃は馬房に入るのを嫌がったりしましたが、教えてあげたら素直になりました」(衣斐氏)

 次走は初のGI挑戦。3冠レースの掉尾を飾る菊花賞(10月25日、京都競馬場)だ。本命は、無敗の2冠馬コントレイル。浜田調教師は「小細工なしで逃げるだけ」と淡々と語るが、スポーツニッポンの小田哲也記者は「コントレイルを負かせるとしたら、バビットしかいません。京都の直線は坂もなく、脚質的に合っています」。

 500万円馬は逃げ切って、1着賞金1億2千万円を獲得するか。(本誌・菊地武顕)

※週刊朝日オンライン限定記事