自慢の外交は、いろいろなことに手をつけたけど、どれもこれも息切れしてしまった。日ロでも日韓でも日朝でも、結実したものはないですよね。アメリカとはトランプ大統領と気が合うとはいうけれども、そのわりにアメリカが何かしてくれることはない。

 ただ、長いということが必ずしも尊ばれることではないけど、7年8カ月の間、首相が同じだったということは、国際的に日本の信用を高めた。民主党政権だって1年に1人代わったし、小泉首相以降も3年で3人代わったわけだから。それに比べると、「安定感」はあった。

 さらに、彼は選挙に強い。民主党から政権奪還し、国政選挙で計6回勝った。だから、安倍さんには自民党の議員は全員恩義がある。安倍さんを批判したり、降ろしたりという動きがほとんど出なかったのは、これです。恩人政治みたいなもんでね。それで助かってきた。

 しかし、終わり方を見て、1年で首相を辞任したときの経験を何も学んでいなかったと思ったね。幕引きをしっかりできない人なんだと。首相は任期中だけが重要なのではなく、自分が辞めて、その後どうするのかも大事。だから、これから後継者がどうなるかで、混乱を生むわけです。(談)

(本誌・吉崎洋夫)

週刊朝日  2020年9月11日号