桜井:まず思いつくことからどんどんやってみて、揺さぶっていったらいいことになると思う。それがもうないとすれば閉めて、新しいことをして変えればいい。

弘兼:あれこれやっているうちに当たることもある。桜井さんのところで精米して、削り終わった米の粉を、モスバーガーのバンズにするような技術とかあったらおもしろいかも! コラボしてみたらいいんじゃない?

桜井:獺祭モスバーガー?

櫻田:そうですよね。なんかできそう。やっちゃおうかな(笑)。

編集部:最後に、これからの高齢社会を踏まえた今後の戦略や方向性などがありましたら教えて下さい。

櫻田:高齢者向けにというのは、過去に何度かやったことはあるのですが、そういったターゲット設定はあまり意味がないと思っています。もっと包括的に子どもから大人まで食べたら健康になる、元気になれるというものを作っていきたいと思っています。健康といってもエビデンスを作れるものでもないので、健康に寄与できるようなモノに近づけていきたいと思っています。そういうコンセプトは創業の時から変えていないので、それを守っていきたい。

 高齢者が多いエリアに何かお届けするとかそういう方法は別として、もっと大きなコンセプトとしては、生きている人に健康なものを作り続けるというのをやっていきたい。根っこにあるモスらしさは外してはならないと。健康、元気、活力みたいなものがモスに期待されていることだと認識しています。これをこれからも守っていきたいですね。

桜井:高齢者になったから嗜好(しこう)が変わるか、というと果たしてそうでしょうか。例えば高齢者向けの食事とかありますが、減塩食なんておいしくないですよ。多くの高齢者は食べるのをやめると思いますよ。やっぱりシニアになってもまだまだおいしいモノを食べたいという人が増えてくると思うんです。そこにうまく酒がはまれば、と思っています。そういうポジションの酒が造れればいいですね。高齢者になると、暗い将来が待っているかというと、決してそうじゃない。

弘兼:そうですね。要は我慢して長生きするより、おいしいものを食べて、お酒飲んでストレスフリーで生活するほうがよっぽど人生幸せです。たとえコロナ禍でも楽しく生きる方法を見つけたいですね。

(構成/本誌・大崎百紀、矢崎慶一)

週刊朝日  2020年8月28日号より抜粋