弘兼:データがあるから質が落ちることはない?

桜井:かなりのところまでいきます。ただ、データ化したから誰でもできるというほど甘くはないんです。どんなに分析しても、それは今日までの現実。自然のものだから明日この酒の発酵がどうなるか、推測はできるけれどはっきりとはわからない。最終的にもろみを搾るタイミングなどは製造責任者が見極めます。

弘兼:櫻田さんのところはどうですか。

櫻田厚会長(以下、櫻田):私が一番感じたのは、モスがフランチャイズチェーンであることが、このコロナ禍においてプラスに寄与しているなと。フランチャイズというのはオーナー。一国一城の主。モスの看板を借りながら自分でやらなければならない。それが良かった。これからはどこの業界でも、昔でいえばベンチャー、アントレプレナーみたいな、こんなことやりたいという人が出てくると思うんです。それを発見する。「モスをどうしよう」だけではなく、加盟店のオーナーの家族が何か新しいことをやりたいというのがあれば、それを応援できるような。そういう世の中にできたらもっと活力が出て、社会が変わってくるのでは。その可能性もあると思っています。

弘兼:お店の形も変わっていく?

櫻田:いいお店つくりますからお店の中で食べていってくださいといっても、しばらくは受け入れていただけないかもしれない。それならば、機能性を充実させるようなところに資金を投入していく、ということが必要になってきます。働き方でいうと、今後は会社に行けばお給料が自動的にもらえる、というシステムはなくなっていくでしょう。何をしてどういう成果を上げて誰がそれを評価するか。テレワークで働くということは、一人ひとりが自分でマネジメントすることが大切になってくる。うちの会社も、書斎までは無理でもデスクぐらいは整えさせて仕事ができるような環境づくりを進めていきます。

弘兼:以前のようにはもう戻らない?

櫻田:想像できないですね。様変わりした働き方やライフスタイルは、30、40代の人はもうそのまま続いていくのではないでしょうか。

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