国立競技場(C)朝日新聞社
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安倍晋三首相(C)朝日新聞社
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東京都の小池百合子知事(C)朝日新聞社
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 新型コロナウイルス感染拡大で延期された東京五輪は、1年後の7月23日に開幕する。国際オリンピック委員会(IOC)と大会組織委員会は今月17日に新日程を発表したが、感染収束の見通しは立っていない。そんな中での開催の動きに疑問の声が相次いでいる。

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「選手村がクラスター(感染者集団)化したら、いったい誰が責任を取るんですか。海外からやってきたアスリートが来日して感染し帰国したら、日本の信用が失墜してしまいます」

 日本維新の会の馬場伸幸幹事長は、開催強行は危険だと指摘する。

 米ジョンズ・ホプキンズ大学の集計によると、世界中で感染者は1400万人、死者は60万人を突破した。また、ワクチンの開発が五輪までに成功したとしても、世界各国に供給できる見通しは立っていない。日本共産党の畔上三和子都議は早めの判断が必要だと訴える。

「南米とかアメリカ、アフリカもすごい感染者数です。世界中で広がっています。IOCにすべての決定権があるのですから、WHO(世界保健機関)などにも確認して、早く判断を出してもらいたいと思います」

 そもそも、どうして延期は1年となったのか。

 組織委関係者によると、組織委は2年延期を考えていたが、安倍晋三首相が1年延期を選んだ。政治ジャーナリストの角谷浩一氏は理由をこう話す。

「安倍さんの首相の任期は来年9月まで。自分が首相の間に東京五輪を開催したいという思いから、延期は1年まででした。2年延期には興味がなかったのです」

 3千億円とも言われる、延期に伴う追加費用の負担でも問題が生じている。

 1年延期は、安倍首相とIOCのバッハ会長が3月24日に電話協議して合意した。元東京都職員で、東京五輪招致推進担当課長だった鈴木知幸氏(国士舘大学客員教授)は、こう話す。

「IOC関係者は中止の懸念をほのめかすことで、安倍首相からの延期の提案を待ったんです。安倍首相に先に申し出るように仕向けたんです」

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上田耕司

上田耕司

福井県出身。大学を卒業後、ファッション業界で記者デビュー。20代後半から大手出版社の雑誌に転身。学年誌から週刊誌、飲食・旅行に至るまで幅広い分野の編集部を経験。その後、いくつかの出版社勤務を経て、現職。

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追加費用の大半は日本側が負担