帯津良一(おびつ・りょういち)/帯津三敬病院名誉院長
帯津良一(おびつ・りょういち)/帯津三敬病院名誉院長
帰宅時間帯、マスク姿で歩く人たち ※写真はイメージです (c)朝日新聞社
帰宅時間帯、マスク姿で歩く人たち ※写真はイメージです (c)朝日新聞社

 西洋医学だけでなく、さまざまな療法でがんに立ち向かい、人間をまるごととらえるホリスティック医学を提唱する帯津良一(おびつ・りょういち)氏。老化に身を任せながら、よりよく老いる「ナイス・エイジング」を説く。今回のテーマは「マスクについて」。

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【呼吸】ポイント
(1)外でみんながマスクをしているのが不思議
(2)マスクで自然な呼吸ができないと免疫力が低下
(3)マスクをするしないをしっかり判断すべき

 コロナ騒ぎはやっと落ち着いてきましたが、今でも外を歩くとほとんどの人がマスクをしています。この光景が私には、とても不思議です。厚生労働省によると、いわゆる“3密”は「換気の悪い密閉空間」「多数が集まる密集場所」「間近で会話や発声をする密接場面」のこと。戸外でまばらに歩いている限りは、3密の状態ではまったくありません。それなのに、なぜマスクをしているのでしょうか。

 私は通常、マスクをしていません。マスクを過信することの方が危険だと思っているからです。

 病院で一番高齢の私がマスクをしていないことを心配する声もあるのですが、患者さんの前でマスクをするのは、私の好みではないのです。白衣も着ないようにしています。その分、診察室の換気を万全にしたり、患者さんとは距離を保って静かに話したりするなど、細心の注意を払っています。医者ですから、マスクなしでも感染予防ができて当然なのです。

 ウイルスは、通常のマスクの繊維の間を簡単に通り抜けます。ですからマスクは自分を防御するためではなく、自分が感染していた場合に、相手にウイルスを含んだ飛沫(ひまつ)を飛ばさないためにつけていると言えます。

 その意味から、私も新幹線に乗るときなどは、周りの人に迷惑をかけないようにマスクをしました。でも1回目の乗車では、車両に客は3人だけ。マスクは意味なかったですね。2回目は人が多そうだったので、東京駅の改札口でマスクをかけて、そのまま乗車しました。この日はやけに暑くて、車内に入る頃にはマスクの中が熱気でムンムンしていました。一番すみの、人から離れたところに座り、列車が発車するや否やマスクをはずしました。

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帯津良一

帯津良一

帯津良一(おびつ・りょういち)/1936年生まれ。東京大学医学部卒。帯津三敬病院名誉院長。人間をまるごととらえるホリスティック医学を提唱。「貝原益軒 養生訓 最後まで生きる極意」(朝日新聞出版)など著書多数。本誌連載をまとめた「ボケないヒント」(祥伝社黄金文庫)が発売中

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