ニコ生出演依頼で作家黒川博之が向かった先 ファミレスでハンバーグを奢るほどよめはんも満足  (1/2) 〈週刊朝日〉|AERA dot. (アエラドット)

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ニコ生出演依頼で作家黒川博之が向かった先 ファミレスでハンバーグを奢るほどよめはんも満足 

連載「出たとこ勝負」

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黒川博行週刊朝日#黒川博行
黒川博行(くろかわ・ひろゆき)/1949年生まれ、大阪府在住。86年に「キャッツアイころがった」でサントリーミステリー大賞、96年に「カウント・プラン」で日本推理作家協会賞、2014年に『破門』で直木賞。放し飼いにしているオカメインコのマキをこよなく愛する (写真=朝日新聞社)

黒川博行(くろかわ・ひろゆき)/1949年生まれ、大阪府在住。86年に「キャッツアイころがった」でサントリーミステリー大賞、96年に「カウント・プラン」で日本推理作家協会賞、2014年に『破門』で直木賞。放し飼いにしているオカメインコのマキをこよなく愛する (写真=朝日新聞社)

写真はイメージです(Getty Images)

写真はイメージです(Getty Images)

 ギャンブル好きで知られる直木賞作家・黒川博行氏の連載『出たとこ勝負』。今回は、学生時代の主任教授だった彫刻家、辻晋堂氏について。

*  *  *  
 ニコニコ生放送の『ニコニコ美術館』という番組への出演依頼があった。いま瀬戸市の愛知県陶磁美術館で開催されている彫刻家・辻晋堂の陶彫展を見て、なんでもいいから話してください、ということだったから、その依頼を受けた。

 わたしはタブレットでグーグルに訊いた。「羽曳野市から愛知県陶磁美術館まで車で何時間ですか」と。「車が渋滞していないので二時間二十七分です」と即座に答えてくれたから、タブレットの中にコロボックルでも住んでいるのかと思う。近ごろのコロボックルは森羅万象、なんでも知っているから大したものだ。

 わたしはよめはんの部屋に行った。「瀬戸の陶磁美術館に行きましょう」と。当然、よめはんは警戒して、「やきものなんか見たないもん」という。「いやいや、ちょっとネットの番組に出るねん」「いつ?」「明後日」「なんの番組よ」「辻晋堂。その作品展を見て、なにか喋らなあかんのやけど、おれは辻さんに怒られたことしか憶えてへんのや」「それでええやんか。麻雀ばっかりしてたんやから」「しかし、ちょっとは立派なこともいわんとな」「似合わんことはせんとき」

 よめはんがいっしょだと交代で運転できる。ナビの入力もできる(わたしはできない)し、携帯も持っているから便利だ。拝み倒して、当日、瀬戸へ向かった。

 ──辻晋堂はわたしが京都市立芸大彫刻科に入学したときの主任教授だった(ひとりは辻、もうひとりは堀内正和で、このふたりの大物彫刻家が彫刻科の二大看板だった)。

 いま思うと、わたしが学校にいたころ、辻さんは五十八歳から六十二歳の、美術家としては働き盛りの齢だった。学内では制作をせず、たまに教室に顔を出しても学生に話しかけるようなことはいっさいないし、制作指導などするはずもない。いつも気難しい顔をして教官室で煙草を吸っている大先生だったから、まともに口を利いたことは一度もないが、怒られたことは三、四回ある。


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