「役人には役人のルールとこれまでの経緯があるから、あまり人事に口を挟んでほしくない。石原慎太郎さんも猪瀬直樹さんも舛添要一さんも最後は役人側の意見を聞いてほどほどで矛を収めていましたが、小池氏は露骨に人事案をひっくり返したり、ある人を置いておくためにそれ以外の人事異動を全部ストップさせたりと、あり得ないことをいくつもやっています」(澤氏)

 都議会与党の都民ファーストの会初期メンバーで、その後離党した上田令子都議もこう指摘する。

「小池さんが知事になってから職員の士気が下がっています。私もやられましたが、小池さんからは才能があれば目立ちすぎて嫌われるし、なければないでバカにされる。職員とのコミュニケーションがうまくいっているとは思えません」

 一方、都民ファ内部では小池氏の評価は高い。同党で副総務会長を務める森愛都議は、小池氏を「すごく気さく」と評する。

「コロナ問題の前は飲み会で都議らとお酒を飲んで、和気あいあいでしたよ。小池さんは『選挙が終わるまで酒断ちする』とか言って笑わせて、ほんとに飲まなかった。昨年の正月に小池さん宅を訪問した時は、『私より愛犬の服の方が高いのよ』と笑っていました。薄化粧で迎えていただき、かわいい感じでしたね」(森氏)

 森氏は、小池氏との会話から実現した「改革」もあると語る。ある日、懇談会の場で、都民ファの女性議員が小池氏に「ベビーカーを押すお母さんたちの多くが満員電車でベビーカーを使うのをためらって、困っている」と伝えたところ、小池氏は「それはすぐ改善しなくちゃ。今すぐできる都営線からやろう」と、すぐに動きだしたという。

「予算化を待たずに『これできるわよね』と交通局に電話して、翌月には都営地下鉄にきかんしゃトーマスの絵が描いてある『子育て応援スペース』をつくった。小池知事は女性ならではの発想とスピード感を持っていると思います」(森氏)

 ただ、成果に疑問符がつく政策もある。17年には「満員電車ゼロ」の公約実現のために「時差Biz」キャンペーンを大々的に打ち出したが、新型コロナの流行前にはラッシュ時の混雑に目に見えた改善はなかった。前出の上田氏はこう指摘する。

「小池さんはアクセサリーのように自分を飾りたてるカタカナ事業が好きですが、平均以下の暮らしの都民が幸せになるようなことはほとんどやっていません」

(本誌・上田耕司、亀井洋志)

週刊朝日  2020年6月26日号

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上田耕司

上田耕司

福井県出身。大学を卒業後、ファッション業界で記者デビュー。20代後半から大手出版社の雑誌に転身。学年誌から週刊誌、飲食・旅行に至るまで幅広い分野の編集部を経験。その後、いくつかの出版社勤務を経て、現職。

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