訪問介護に携わるヘルパーは、濃厚接触や感染の疑いで自宅に待機している利用者やその家族の家を訪れるケースもある。

 結城教授の調査では、担当している利用者の中に、新型コロナに感染した人がいるか質問したところ、約2%にあたる9人が「いる」と答えた。

 ニアミスと呼べるケースについて話してくれたのが、埼玉県新座市で居宅系介護サービスを運営するNPO法人「暮らしネット・えん」の代表理事の小島美里さんだ。近くのデイサービスで感染者が出たが、そのデイサービスを利用していた1人の利用者が、えんの訪問介護サービスも受けていたことがわかったのだ。

 小島さんは当時のことをこう振り返る。

「保健所から、その利用者さんは濃厚接触者にはあたらないと言われるまでは、ヘルパーを統括するサービス責任者が予防衣とサージカルマスク、フェースシールドなどの装備で訪問しました」

 ヘルパーは最初の研修で感染症の基本を学ぶ。だから、インフルエンザやノロウイルスなど従来の感染症については、ある程度、知識を持って対策にあたることができる。

 だが、新型コロナは未知のウイルス。対応策は万全ではなく、ヘルパーも不安な状態で利用者宅を訪れなければならない。

 何より、訪問介護のヘルパーは、現場の関係者が自虐的に“老老介護”というほど高齢化が進んでいる。60代が主力で、現役で働く70代、80代のヘルパーも少なくない。

 また短時間から働けて、子育てと両立ができることから、ママヘルパーもいる。

 高齢者ヘルパーは自身への感染が不安であり、ママヘルパーは子どもの幼稚園や保育園、学校が休園・休校となるため、いずれも仕事を休むことになる。

 小島さんは、新型コロナがきっかけで、ヘルパーの人材不足が加速しないか心配する。

「もともとヘルパーの有効求人倍率は13倍で、募集してもまったく集まらない状況です。そういうなか、今回の新型コロナの影響でさらに働き手が減ってしまうようなら、閉鎖する事業所も出てくるのではないでしょうか」(小島さん)

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