京都地裁を出る、青葉容疑者を乗せた救急車(撮影・今西憲之)
京都地裁を出る、青葉容疑者を乗せた救急車(撮影・今西憲之)

 36人が犠牲になった昨年7月の京都アニメーション放火殺人事件で、殺人などの疑いで5月27日に逮捕された青葉真司容疑者(42)が、事件後初めて、公の場所に姿を現した。青葉容疑者は現在、大阪拘置所に勾留され、京都府警による取り調べを受けている。その勾留理由を開示する手続きが6月9日、京都地裁で始まったのだ。

【写真】防犯ビデオに映った事件直前の青葉容疑者

 午後4時すぎ、京都地裁の法廷についたてが置かれた。青葉容疑者はその中を、8人の刑務官と4人の裁判所職員に介助されながら入廷した。

 ついたてが取り外されると、傍聴席からはストレッチャーに乗せられて横になったままの青葉容疑者の姿が見えた。頭を裁判官の方に向け、顔以外はシートのようなもので覆われていて、よく見えない。

 犯行当時、自身も大やけどを負い、一時は生死の境をさまよった青葉容疑者。間近で見るその姿は、マスクをした顔の右側から首筋にかけて真っ赤なやけどの痕跡が残っていた。右耳はただれて形が崩れており、犯行時の壮絶な現場の様子がうかがえる。

 裁判官が冒頭、青葉容疑者に名前をたずねると、

「青葉真司です」

 と、ストレッチャーの上からハッキリ答えた。生年月日も、

「昭和53年5月16日」

 と述べ、犯行直前まで住んでいた埼玉県の住所もよどみなく答えた。その様子から、意識は明瞭であるように思えた。

 弁護側は青葉容疑者の勾留が不当だとして裁判所に理由の開示を求めていた。裁判所は今回、青葉容疑者の勾留を続けている理由について、「第三者を介して、逃亡や証拠隠滅の恐れがある。勾留を認められる証拠がある」と、述べた。

 これに対して弁護側は、

「(青葉容疑者に)38度もの発熱があった」
「7回、接見に行ったが4回は体調が悪く会えなかった」
「接見時にしんどいと話していた」
「全身90%ものやけどをおい、生命の危険さえあった。手足も拘縮して、筆記用具すら持てない。電話もできない。証拠隠滅や逃亡をするなど、ありえない」
「通常の生活は、すべて他人の介助が必要」

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弁護側の訴えに、青葉容疑者の反応は