もちろん体験の「レベル」は記者のほうが低い。招待されてミーティングに参加するだけの「受け身」だからだ。ミーティングでは、若い主催者が「画面共有」といった様々な機能を使いこなして会議を進めていくのを、ただ見ているだけだ。

 これまでであれば気にしなかった。しかし、「コロナ後、企業のデジタル化が加速する」と叫ばれるようになって慌てた。さらなるデジタル化? 一体、何が起きようとしているのか。流れに乗り遅れたら、高年齢ワーカーははじき飛ばされてしまうのか……。

 超高齢社会が進み、高年齢ワーカーは「長く働く」ことが推奨されているから、なおさら関心がある。「定年」後のワークを有意義なものにするためにも、デジタル化にしっかりとついていく必要がある。

 ITライターの荻窪圭氏によると、オンライン会議が広がったのは「わかりやすさ」が受けたからという。

「顔を見ながら話したいというニーズにピッタリはまりました。複雑な操作や専門知識が不要ですし、今のノートPCにはカメラやスピーカーがついているので、多くの人にとって追加の機材が必要なかったことも大きかった。手持ちの環境で参加できたのです」

 なかでも、Zoomの浸透ぶりはすさまじかった。1日の利用者数を示すデイリーユーザー数は、昨年末に全世界で1千万人だったものが、3月末には2億人に跳ね上がった。

「ほかのシステムはビジネス専用だったのに対し、Zoomは専用アプリがなくても使え、主催者以外は会員にならなくても参加できる。オンライン飲み会にも使える敷居の低さで人気が集まりました」

 そして今、オンライン“コミュニケーション”に商機が生まれ、Zoom以外の他社も攻勢を強めている。例えば、グーグルが5月に「Google Meet」を一般公開して利用を促すなど動きは急だ。人によって使うシステムが違うため、いくつかのシステムをPCに入れておくのが常識になるかもしれない。

 デジタルを活用したコミュニケーションツールの変遷ぶりには驚くばかりだ。「電子メールに始まり、インターネット上での雑談であるチャットやSMSやフェイスブックのメッセンジャーなどのインスタントメッセージ、ネットを使った音声通話、そしてオンライン会議……」(荻窪氏)

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