カンヌをはじめ世界中の映画祭を席巻した問題作「その手に触れるまで」。監督は「イゴールの約束」以来、「ある子供」「少年と自転車」「サンドラの週末」など発表する作品すべてが世界的な賞を受賞し、名実ともに世界的巨匠となったダルデンヌ兄弟。出演するのはほとんどが無名の俳優たちだ。
ベルギーに暮らす13歳のアメッドはどこにでもいるゲーム好きの普通の少年。しかし今はイスラム教の聖典コーランに夢中。小さな食品店の2階のモスクで行われる礼拝に熱心に通っている。
ある日、放課後クラスのイネス先生との“さよならの握手”を拒んだアメッドは、それを知った母親に「先生は識字障害克服の恩人であり、読み書きなどを教えてくれた」と叱られるが、かえって反抗してしまう。やがて彼はどんどん狂信的な思想に取りつかれていき、イネス先生をイスラムの敵と考え始め、抹殺しようとする──。
アメッドが囚われてしまった過激な正義。まだ世界を知らないまま、善と悪、純粋と不純を分けてしまうのだが。
本作に対する映画評論家らの意見は?(★4つで満点)
■渡辺祥子(映画評論家)
評価:★★★★ 超オススメ、ぜひ観て
ダルデンヌ兄弟が描く少年たちは一途で頑固だ。そんな少年が信仰にのめり込む。恐らくはその結果に思いを巡らせながら、違う世界があることを教えなければ、と考えた結果がベテラン監督らしい人間味と共に差し出される。