本誌は4月28日配信のオンライン限定記事で、A社が各縫製工場に対して配布したアベノマスク「仕様書」を詳報した。

 その後、A社は縫製工場に作り方を解説した動画も送付。本誌が入手したその動画は約26秒で、海外の工場で女性数人が台紙のようなもののうえに、1枚の大きなガーゼを敷き、ペタン、ペタンと折り畳み、ゴムを通しす工程が収録されていた。

 本誌の取材に対し、A社はこう回答した。

「異原糸は、汚れではありませんし、健康上の問題は一切ございません。ただ、見た目が悪くなるという事から、弊社としては畳み方を工夫して 、 対応 して欲しいとお伝えしておりました。また、現状では国民感情に鑑み、異原糸込みのマスクは不良品として落としております」

 大量に不良品が出ていることについては、「通常の繊維製品ではありえない基準まで検品基準を、厳しくしましたので不良品率が増えております」と回答。

 現在、未納のマスクはどれぐらいあるかという質問には「回答を控えさせていただきます」。

 不良品の山となったアベノマスクについて前出のアパレル業者は複雑な心境をこう語る。

「日本国民としては、税金で作られたマスク、こんなに不良品があっていいのかという思いはあります。しかも中国などで作ったマスクは一枚10円前後。国内で検品料や追加製造費も上乗せされ、最終的に1枚120円~150円の値段になるだろう。その一方で、コロナ関連でまったく仕事がない中でA社から発注があって、会社としては救われたのも事実。申し訳ないような複雑な思いです」

 郵送料も含めて466億円もの税金投入したにも関わらず、不良品が続出し、配達作業を中断しているアベノマスク。自民党幹部はこう話す。

「アベノマスクはマスク不足に対応する政策で短期間で全世帯に配布されなければ意味がない。すでに市場で飽和状態となりつつあるマスクを今さら残りの世帯に配っても間抜けなだけでしょう。しかも国内産となれば、かなりの割高。安倍官邸が音頭をとったアベノマスクですが、不良品問題、業者選定の不透明さなどで疑念ばかり生み、結果的にはやらないほうがよかった。安倍政権の命取りになりかねないと不安視する声もある」

 アベノマスクの落とし前を安倍官邸はどうつけるのだろうか。
(今西憲之/本誌・吉崎洋夫)

※週刊朝日オンライン限定記事

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今西憲之

今西憲之

大阪府生まれのジャーナリスト。大阪を拠点に週刊誌や月刊誌の取材を手がける。「週刊朝日」記者歴は30年以上。政治、社会などを中心にジャンルを問わず広くニュースを発信する。

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吉崎洋夫

吉崎洋夫

1984年生まれ、東京都出身。早稲田大学院社会科学研究科修士課程修了。シンクタンク系のNPO法人を経て『週刊朝日』編集部に。2021年から『AERA dot.』記者として、政治・政策を中心に経済分野、事件・事故、自然災害など幅広いジャンルを取材している。

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