「フロントと客室の行き来だけで済む宿泊特化型のビジネスホテルは受け入れに適しています。何よりアパホテルはトップダウンの企業経営で、早く対応できた。メディア戦略が非常にうまく、今回も宣伝効果は抜群だったと思います」

 苦しいのは名門ホテルも同じだ。「帝国ホテル」の担当者は「お客様は大幅に減っています。9日から宿泊を最小限の運用にするなど営業を縮小しています」。ただ、レストランなどの公共スペースが多く、軽症者を受け入れにくい。「複合ホテルという特性を考えると、ハードルがいくつかあり、対応が難しいのが現状です」

 ホテルなどの労働組合でつくるサービス・ツーリズム産業労働組合連合会は7日、軽症者らの受け入れに原則反対の姿勢を打ち出した。

「働く者の安全が気がかり。『万が一、部屋で患者の容体が急変したら……』という心配もある。ホテルは医療的なことを行うには限界がある。慎重にならざるを得ません」(担当者)

 中国・武漢からの帰国者を受け入れた「ホテル三日月」の例も、二の足を踏ませている。「周辺の関係のないホテルで宿泊の取り消しが相次ぎました。一帯がそう見られてしまうと考えると、ナーバスになります」(同)と風評被害を懸念する。

 一転して逆風にさらされたホテル業界。生き残りをかけた闘いが続く。(本誌・秦正理)

週刊朝日  2020年4月24日号

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秦正理

秦正理

ニュース週刊誌「AERA」記者。増刊「甲子園」の編集を週刊朝日時代から長年担当中。高校野球、バスケットボール、五輪など、スポーツを中心に増刊の編集にも携わっています。

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