こう疑問を呈するのは、感染対策に詳しいグローバルヘルスケアクリニック院長の水野泰孝医師。感染対策というとN95やサージカルマスク、手袋、ガウンなどのPPE(Personal Protective Equipment)という防御服を思い浮かべるが、それを正しく脱着できなければ、やはり感染のリスクは残ってしまう。

 実際、中国・武漢でPPEを装備して対応に当たった医療者が、新型コロナウイルスに感染したケースが散見されている。

「大事なのは、感染対策に精通した医師や看護師がいるかです」(水野医師)

 新型コロナウイルスの主な感染ルートは接触や飛沫であり、その予防対策で必要なのは、徹底した手指衛生。いわゆる手洗いやアルコール消毒のことだが、水野医師によると、これをタイミングよくできるだけで、感染のリスクを低く抑えることができる。

 そういう意味で注目されているのが、医療機関の施設基準の一つである「感染防止対策加算」だ。簡単に言うと感染防止対策の専門家がいて、定期的にカンファレンスをするなど、しっかりと感染対策に取り組んでいる施設、ということになる。

 ちなみにこの施設基準をとると、入院患者一人あたり3900円の診療報酬がつく(入院初日)。2013年では、大学病院などを中心に、90施設以上がこの加算を取っている。

 まずは、入院先を重症者と中等症者にわけ、重症者は感染症対策をしつつ、ICU(集中治療室)やECMO(体外式膜型人工肺)があり、高度な医療が実施できる指定病院へ。中等症は感染防止対策加算をとっている医療機関で対応する。

「院内感染を起こさないためにも、感染対策が整った医療機関にこそ、新型コロナウイルスの患者さんを受け入れてほしい」と水野医師は訴える。

 東京で感染爆発による医療崩壊を起こさないためには、4000という数字ありきではなく、感染管理の質まで考えた病床確保が必要ではないだろうか。(本誌・山内リカ)

※週刊朝日オンライン限定記事