「トランプ大統領が延期と言ったんだから、7月の開催はもう無理だろう。アメリカ、ヨーロッパは日本より1か月ほど遅れて新型コロナウイルスの感染者が増えている。ピークが4月中旬から下旬になり、厚生労働省に聞くと、そこからまた1か月して南米、豪州などオセアニアへ拡大していくだろう。IOCはWHOから話があれば、五輪延期はありえると言っていた。日本がどう言っても五輪は、IOCに権限がある」

 野党議員も東京五輪は絶望的とみている。

「私は現実的にはオリンピックの開催はもはや困難だと思います。仮に7月の段階で日本が感染の収束傾向にあったとしても、諸外国でピークのズレがありますから、そういった方々を世界各国から呼んで開催するというのは現実的ではないと思いますね」

 トランプ大統領が「延期」を発言したのは3月12日のこと。政治ジャーナリストの角谷浩一氏は、永田町の動きをこう語る。

「この日、小池百合子都知事が官邸に入り、安倍さんと面会しています。そして、当日夜にはトランプ大統領が1年延期を言い出したんですね。だから、一連の動きは全部が仕組まれたセットじゃないかと見ています」

 今夏の東京五輪が1~2年延期になると、本来開くはずだった7~8月は政治的に空白となる。

「その期間に都知事選と衆院選挙のダブル選挙の可能性は大いにある。トランプ発言から野党も解散を警戒しているようだ」(前出の自民党幹部)

 コロナ問題、東京五輪の延期、最悪中止となれば、経済損失は32兆円にも上ると言われている。

「景気は1~2年は低迷するだろうから安倍さんは消費税を5%ぐらいまで引き下げて、人気回復を狙って衆院を解散するのではないか。いまの景気動向をみれば、回復は1~2年では足りないだろう」(同前)

 冒頭の記者会見で、安倍首相は消費減税について質問され、まんざらでもない様子でこう語った。

「自民党の若手有志のみなさまが、消費税について『思い切った対策を取るべきだ』という提言があります。(新型コロナウィルス感染拡大の)経済への影響は相当あるわけです。成長軌道に戻していかなければいけない。こうした提言も踏まえながら、世界経済の動向を注意深く見極めて、必要かつ十分な経済、財政政策を間髪入れずに講じていきたい」

 野党では国民民主党の玉木雄一郎代表やれいわ新選組の山本太郎代表も消費税減税を訴えている。

「野党議員と話すと、自民党が5%減税と言う前に、野党も3年間消費税ゼロを先に言わねば、などと話していた」(前出の自民党幹部)

 五輪延期はもはや与野党でも規定路線となりつつあるようだ。
(本誌 上田耕司 /今西憲之)

※週刊朝日オンライン限定記事

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今西憲之

大阪府生まれのジャーナリスト。大阪を拠点に週刊誌や月刊誌の取材を手がける。「週刊朝日」記者歴は30年以上。政治、社会などを中心にジャンルを問わず広くニュースを発信する。

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上田耕司

上田耕司

福井県出身。大学を卒業後、ファッション業界で記者デビュー。20代後半から大手出版社の雑誌に転身。学年誌から週刊誌、飲食・旅行に至るまで幅広い分野の編集部を経験。その後、いくつかの出版社勤務を経て、現職。

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