新型コロナウイルスの影響でマスクが店頭から消えた。さらにここ数日、トイレットペーパーやティッシュペーパーも売り切れる店が続出している。
「紙不足でトイレットペーパーがなくなる」といったデマがネット上で広まり、多くの人が慌てて買ったことが原因だ。実際は在庫もあり、マスクとは状況が異なる。国やメーカー、小売店などは、デマに惑わされないよう呼びかけるが、騒動は収まっていない。
「トイレットペーパーは開店してすぐに売り切れました。物流センターには在庫があるので、毎日商品は入ってきます。お客様にはデマに踊らされないよう呼びかけていますが、なかなか理解してもらえません」
こう話すのは都内のドラッグストアの店員。店内のトイレットペーパーやティッシュペーパーの棚は、2月29日昼時点では空っぽ。買いに来たある女性客は、「ここもなかった」と戸惑っていた。
ほかのドラッグストアでは、開店前に長い列ができたところもあった。スーパーでも、トイレットペーパーを抱えてレジに並ぶ人の姿が目立った。大手スーパーの担当者によると、都内の店を中心にトイレットペーパーは通常の3~4倍は売れており、商品を並べるのが追いつかない状況だという。
1973年の石油危機(オイルショック)の時に物価が高騰し、トイレットペーパーなどを買い求める行列ができたことを思い起こさせる。石油危機の当時も、今回と同じように在庫や供給力はあり、物不足を心配する必要はなかった。それなのに、口コミなどでデマが広がり、多くの人が店に殺到してパニックになった。国やメーカーなどは対策を取ってきたが、今回もパニックのような状況が見られている。
東日本大震災の時も不足はしたが、物流の寸断や供給力の低下などもあり、今回とは事情が異なる。在庫や供給力はあるのにトイレットペーパーが店頭から消えた大きな要因は、ネットだ。
「マスクの次に不足するのは原材料が中国から入らないトイレットペーパーだ」といったデマが、早い段階からSNS(ソーシャル・ネットワーキング・サービス)で飛び交っていた。
最初はネット上での誤った情報だったものが、心配になった一部の人が実際に購入。熊本市など一部の地域の店で、局所的に売り切れる事態となった。空になった棚の写真がSNSなどで拡散され、「本当にないんだ」と思った人が買いに行くことで、他の地域にも品不足が広がっていった。その状況が報道されることで、「デマかもしれないがとりあえず買っておこう」という人が増えた。