本市の大西一史市長は2月27日にツイッターでこう呼びかけた。

「【デマにご注意】熊本でデマが流されトイレットペーパーやティッシュなどの買い占めが起こっているようですが確認したところティッシュ等はほとんどが国産で製造に全く影響ありません。まとめ買いしなくても大丈夫です。熊本市の指定ゴミ袋も在庫は数ケ月分あります。皆さん落ち着いて行動して下さい」

 ネットでの転売目的の買い占めが、事態を悪化させたという見方もある。オークションサイトやフリマアプリでは、通常300円前後のトイレットペーパーが、5倍以上の価格で売りに出されたケースもあった。

 こうした高値での転売は、マスクや消毒剤でも見られている。経済産業省は2月28日、次のように発表した。

「転売目的での買い占めを防止するとともに、既に転売目的で保有しているマスクを市場に供給するため、従来の高値取引の自粛から更に一段取り組みを進め、一定期間後オークションへの出品自体の自粛を求めます」

 ネットオークション事業者に、3月14日以降当分の間、マスクや消毒液の出品の自粛を要請するものだ。だが、トイレットペーパーなどについては、こうした要請はまだしていない。

 そもそも出品の自粛については強制力はなく、オークションサイトやフリマアプリは多数あるため、転売を完全に防ぐことは難しい。

 国への信頼が揺らいでいることも背景にある。

 経産省は2月28日に、「トイレットペーパーは不足していません。需要を満たす十分な供給量・在庫を確保しています。安心して落ち着いた行動をお願いいたします」と呼びかけた。業界団体の日本家庭紙工業会も同日、「トイレットペーパー、ティッシュペーパーの供給力、在庫は十分にあります」と発表した。

 安倍晋三首相も2月29日の会見で、「トイレットペーパーはほぼ全量が国内生産で十分な供給量や在庫が確保されているので、冷静な購買活動をお願いしたい」と訴えた。

 在庫や供給力をアピールするものだが、マスクについて国は品不足を解消できていない。当初はメーカーがフル生産することで2月17日以降は解消に向かうと説明していたが、実際はいまも品不足は続いている。せきなどの症状がある人はマスクをするように国は呼びかけているが、そのマスクが手に入らない。ほかにも一部の輸入野菜や家電、日用品などで物不足が起きている。ネット上では、国は信用できないといった意見もある。

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「経営のスリム化」で想定外に対応できない企業