とはいえ医学部はもともと偏差値が高く、志願者が減っても難関であることには変わりはない。志願動向の詳細を見ていこう。

 今年の国公立大医学科の志願者数は大きく減少する見込み。駿台教育研究所進学情報事業部の石原賢一部長は「浪人生が減っており、現役生にとって今年は受かりやすい。しばらくはこうした傾向が続く」と見る。

 最難関の東大理三は前年比99・8%(2月6日時点)で、最終的にやや増加となりそうだ。昨年、志願者数を減らしたことに加え、第1段階選抜のラインが低いという予測があるためだ。一方、京都大医学科も志願者を減らした。前年比93・3%で2年連続の減少だ。

「今年は受験生の安全志向が強いが、東大理三は『ここに入りたい』という受験生が多く、その影響が少なかった。反対に京大は安全志向の影響が出ている。今年はセンター試験の平均点が下がったので、2次試験の比率を高く変更した大阪大に挽回できる可能性があると考え、志願者が集まったのでしょう」(石原部長)

 安全志向の影響は他の大学でも出ている。北海道大は119・2%、名古屋大は109・2%と大きく志願者数を伸ばした。北海道大は予備校が公表している合格目標ラインが旧帝大の中で最も低く、道外の受験生も合格を狙って出願し、名古屋大は京大や阪大を目指す地元受験生の受け皿になったとみられる。

 東北大は志願者が前年比71・2%。医学科の募集人員が昨年の105から77に大きく減ったためだ。

 その他の国公立大では、今年も医学科特有の激しい“隔年現象”が起こっている。隔年現象とは、前年に志願者数を減らした大学に志願者が集まる現象のことだ。逆に前年に大きく志願者を増やした大学は次の年に大きく減る。例えば、秋田大が前年比179・5%と大きく増加したが、昨年は前年比50%と志願者を減らしていた。反対に和歌山県立医科大の志願者数は今年、前年比44・2%と大きく減少。昨年は前年比171・2%だった。

 石原部長は説明する。

「医師になるには国家試験をパスすればいいので、大学はこだわらない受験生は多く、模試の結果から合格可能性が高い大学を目指す。前年に志願者が増えた大学は判定が厳しくなり、減った大学では良い判定が出る傾向があり、その結果、激しい隔年現象が起こります」

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不誠実な姿勢…入試差別問題を引きずる私大も