(C)榎本まみ
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 新卒で督促業界に入ったOLが、毎日、怒鳴られ、脅されながら、年間2000億円の債権を回収するまでを描き15万部のベストセラーとなった「督促OL修行日記」(文藝春秋刊)。その後も都内のコールセンターに身をひそめ、スキルと経験を積んでパワーアップした督促OLがクレーマー、カスハラ(カスタマー・ハラスメント)に逆襲する術を伝授する。

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 コールセンターではよく「応対品質」という言葉が使われる。そして多くのコールセンターではそれをとても重要視している。応対品質とはなにかを一言で表すのは難しいが、私は「電話に出たオペレータがどれだけスムーズかつ正確に、印象よく(相手を怒らせることなく)満足させながら受け答えをしたか」ということをひっくるめて表す言葉だと思っている。重要なものなのだが、応対品質を上げることはとても難しい。

 まず正確に応対品質を数値で測ることが難しい。コールセンターによってはクレームの数やお客様からのお褒めの言葉、また電話がつながるまでの時間や呼損(電話に出られなかった数)によって応対品質を測っているところがあるが、それで正確に応対の良し悪しを測れているかと言われると疑問がある。

 また応対品質は研修で上げることが難しい。計測がしにくいということは、具体的に何が高い応対品質と言われているのか表すことも難しいということだ。研修では業務知識や敬語や丁寧語などの言葉遣いを教えることはできても、「応対品質向上」と銘打った研修はせいぜい模範とされるベテランオペレータの音声を聞くくらいだ。

 だから今のコールセンター業界では、応対品質の良し悪しはオペレータの資質に頼りがちになっている。高い応対品質は一種の個性や才能であるとみなされているのだ。

 受け答えの上手なオペレータが入ると「いい人が入ってラッキーだね」と言われ、クレームを起こしがちなオペレータが入ると「あの人はお客さんを怒らせちゃうんだよね」と問題児扱いされる。教育によって応対品質を向上させることが難しいので、問題のあるオペレータはなぜ自分がお客様を怒らせるのかがわからないまま、怒鳴られることに疲れて辞めていってしまう。

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榎本まみ

榎本まみ

榎本まみ(えのもと・まみ)/新卒で督促を行うコールセンターに入社するも心を病んで辞めていく同僚を見て一念発起。クレームや罵詈雑言からオペレータの心を守る独自メソッドを開発。現在もコールセンターで働きながらコラムや漫画を執筆している

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「お金を払ってほしい」と督促するときのNGは?