応対品質というのはなんだかつかみどころが無いものだが、私は新人オペレータだったころ「応対品質を上げたい!」と強く願ったことがある。私も問題児と言われるオペレータと同様に、毎日お客様を怒らせ怒鳴られていたからだ。

 私が働いていたコールセンターは督促という支払いが滞ったお客様に入金のお願いするという特殊なコールセンターで、業界内でもトップレベルのクレーム率と言われている所だった。お金がないと人は余裕がなくなり、余裕がなくなると些細なことで怒りやすくなる。そんなお客様に「お金を支払ってほしい」と言いづらい電話をかける督促は、「忙しいときにかけてくるな!」「お前の言い方が気に食わないんだよ!」と罵声が飛んでくることがしょっちゅうだった。

 応対品質を上げたいというよりは「怒られたくない」という一心で、私はどうすれば相手を怒らせることなく満足させる電話ができるのかということを研究したのだった。

 そして新人時代から10年以上が経ち、私の応対品質は劇的に向上した。いまや電話口でお客様を怒らせることは皆無で(最初から怒っているクレームは別としても)、新人研修では私の電話音声が模範音声として使われているし、お褒めの言葉をもらう率はトップだったこともある。自慢のつもりではないし、私は自己評価が低いので自慢に聞こえることも言いたくはないのだけれど、ただ、どうしても、高い応対品質を生み出すものは資質でも才能でもない、ということを言いたかったのだ。

 高い応対品質を生み出しているものはなんなのか、私はそれを血眼で探した。そしてそれがいくつかの能力に起因しているのではないかと思い至ったが、その代表的なものが「自信」だった。

 聞かれたことに正確に答え、相手に不安を与えない堂々とした受け答えをする。応対品質、もしくは顧客満足度が高い応対というのはつまりオペレータに「自信」のある応対なのである。

 その自信を生み出しているのは知識や経験だ。だからコールセンターでは社歴の長いオペレータほど応対品質が高くなる。けれどまれにコールセンターが初めての新人でも、すばらしく応対品質の高い応対をしているオペレータがいる。そんな人に話を聞くと人生経験が豊富な人が多かった。なかなかない修羅場を経験していたり、なにかしらの武勲を持っていたりする。彼らは自分に根拠のある自信がある人たちだったのだ。

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低い声でしゃべる効果