関さんが週3日勤務にしたのは、若いころから打ち込む卓球との両立を図るためだ。40代や50代のころには何度かアマチュアの全国大会に出場したほどの腕前で、現在も週に3日は練習している。

 もう一度全国大会に出場することを目指し、コーチも雇っている。「コーチ代を夫に出してもらうわけにはいきませんからね」と、働き続けたい理由を話す。趣味に打ち込めるのも“軍資金”があればこそ、なのだ。

 さらに関さんは、障害者スポーツの指導員資格も取得。目の不自由な人の卓球で、審判や指導をすることをライフワークにしたいと話す。

「フルタイムで働いていたときにはできなかったことに、いろいろ挑戦していきたい」(関さん)

「当社の場合、大半のシニアが週3日程度の勤務にしています」と、高齢社の緒形憲社長は話す。趣味や社会活動との両立や体力を考えると、シニアには、そのくらいがちょうどいいのだという。

 リクルートスタッフィングにもフルタイムではない契約の人はかなりいるという。朝は早くてもいいから時短で働きたい、個人事業主だが社会との接点を求めて派遣社員もしたい、ただし週数日で、といったケースだ。

 東京大学先端科学技術研究センター講師で『超高齢社会2.0』を著した檜山敦氏はこう解説する。

「シニアの求める働き方には、職務や勤務地、労働時間が無限定のメンバーシップ型正社員よりも、それらが契約で定められる、ジョブ型の派遣社員が適している」

 檜山氏は11年、千葉県柏市で開催された、高齢者の就労をテーマにしたセミナーに集まったシニア約200人にアンケート調査を実施したことがある。働く目的や何を重視するかなどを聞いたのだが、「健康のため、友達作りのため、新しい経験をしたい、社会に貢献したいなど、回答は実に多様でした」(檜山氏)。

 そして働きたいときに働け、休みたいときは休めるというように、柔軟な働き方を求めていることもわかった。

 そこで檜山氏はICT(情報通信技術)を活用してシニアの柔軟な働き方を支援するアプリを開発、実際に使ってもらう研究などに取り組んでいる。

 ジョブ型雇用の派遣社員は、職務内容や労働条件を契約でしっかり決められる。そのため責任の範囲が明確、限定的になるというのが、派遣という働き方のメリット、その2だ。

 高齢社の派遣社員、大石美代子さん(65)はライフバルのショールームで接客担当として働いている。60歳までは9年ほど別のライフバルでパート社員をしていたが、接客のほか伝票の入力作業なども担当していた。「仕事を覚えるにつれて、どんどん残業も増えていきました」と、当時を振り返る。

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