「特に文系では難関私立大を敬遠する動きが顕著。偏差値が60以上の受験生では早慶上理の志願が大きく減っている。同じように、偏差値50台ではMARCH・関関同立以上の志願が、偏差値40台では日東駒専・産近甲龍以上の志願が減っている。挑戦しない受験生が昨年以上に多い様子がうかがえます」(富沢部長)

 そもそも、今年に限らず、最近の志願動向は安全志向が続いていた。文部科学省は地方から都市部への進学者の流入を問題視し、16年度入試から私立大の定員管理の厳格化を実施。都市部にある多くの人気私大で合格者数が絞り込まれ、競争が激化した。そのため、模試でA判定を取った大学でも合格できないような状況が起き、難易度の低い大学を多く受ける安全志向が受験生の間に広がったのだ。

 新テストをめぐる混乱から、本年度はさらにその傾向に拍車がかかるならば、ランクを下げたために「絶対ここは受かる」と思っていた大学にまで落ちてしまった……なんてこともありうるだろう。

 次に、主な難関国立大の個別状況も見ておこう(表)。東大は全体の志願者が前年比100%。しかし、文科二類の志願者が前年比92%と低くなっている。昨年度入試でこれまで文系で最難関だった文科一類の合格者最低点などを文科二類が上回ったため、受験生が忌避していると見られる。

 また、東京工業大の全体の志願者は前年比80%、一橋大も74%と大きく志願者を減らしている。両大学とも入試問題が独特で、センター試験の結果を踏まえてから対策をするのは難しいと言われており、安全志向から志願者が減っていると見られる。このままいけば、競争は緩まりそうだ。

 富沢部長はこう語る。

「この先、不安から志望大学を下げていく受験生もいますが、本年度はむしろ難易度が高い大学がねらい目。第1志望を維持するべきです。近年は3月入試などで合格者を確保する大学も目立つ。また、昨年度入試の倍率が高かったため、揺り戻しでセンター利用方式の志願者が減ると思われます。過去3年分ほどの合格最低点を確認して出願を検討するべきでしょう。チャンスは最大限に活用した方がいいですよ」

 国の制度変更に振り回されている受験生。苦境にめげず、合格を勝ち取ってほしい。(本誌・吉崎洋夫)

※週刊朝日オンライン限定記事

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吉崎洋夫

吉崎洋夫

1984年生まれ、東京都出身。早稲田大学院社会科学研究科修士課程修了。シンクタンク系のNPO法人を経て『週刊朝日』編集部に。2021年から『AERA dot.』記者として、政治・政策を中心に経済分野、事件・事故、自然災害など幅広いジャンルを取材している。

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