高齢者と呼ばれるようになる65歳で新たな一歩を踏み出した人たちがいる。実業家の高田明さん(71)、歌手のロザンナ・ザンボンさん(69)──。それぞれの刺激的な日々を紹介する。
■高田明「人生に失敗というものはない」
高田明さんが65歳を迎えた2013年は、社長を務めていた通販大手ジャパネットたかたにとって、大きな転換の年だった。
高田さんが実家のカメラ店から独立して、長崎県佐世保市に「たかた」を創業したのは、1986年。94年からテレビショッピングを開始。業績は右肩上がりで、06年度には売上高が1千億円を超えた。
しかし、11年度、12年度と2年連続で経常利益が大きく落ちた。薄型テレビなどの省エネ家電を買った際につく家電エコポイント制度の終了に伴い、主力商品であるテレビが全く売れなくなったからだ。業界内では倒産危機さえささやかれたという。
「周りはいろいろ言っていましたけど、僕はなんとも思っていませんでした」
と、高田さんは回想する。
「もともと僕は、数字を全然意識しませんから。『経営目標を持たない経営術』という講演をしたこともあるくらいで(笑)。一喜一憂することもありません。でも、社員は不安だろう、何かやったほうがいいのかな、と思いました」
そこで掲げたのが「13年度は過去最高益を上回る」という大目標。加えて「最高益を更新できなければ社長を辞める」と宣言した。
「目標を出すだけでは、覚悟の年だと社員に伝わらないんじゃないかな。僕が辞めるというのが一番伝わり、社員一丸で頑張るだろうと思ったんです」
このアナウンス効果は大きかった。それまであまり重きを置かなかった白物家電などの販売に注力。息子の旭人副社長(当時)が指揮を執る東京オフィスと佐世保本社が良い意味で張り合った。
その結果、13年度の経常利益は、過去最高の136億円(10年度)を上回る154億円に。
「達成したんだから、普通だったら『あと10年やろう』と思うかもしれません。でも、僕は2年で辞めようと。この1年間で、後継者(旭人氏)のめどが立ったからです」