3時間お話ししてるわけですから、動画でも入りきらなかった話はたくさんあるのですが、現役時代にカレーを毎日食べていた話は本当でした。そこまでは動画に入ってるのですが、その理由。僕はめちゃくちゃ納得してしまいました。これは話を聞いた僕の解釈なのですが、朝起きて試合が終わるまで、余計なことを考えたくないし、ストレスを感じたくないわけですよね。例えば、毎日違うもの食べてると、当たり外れがありますよね。「うわ、うまい!」とか「うわ、いまいちだな」とか。そういうことを試合前に思いたくないということですね。だからそこは毎日同じにしているのではないでしょうか。

 僕は数日間、同じ脚本を書いているときとか、机の周りが汚くなっていきます。これ、汚くなっているように見えているのですが、そこにモノや原稿、本などを置いているんですよね。散らかってるように見えて置いている。だからこれを少しでも片づけられてしまうと「あ~~~」とペースが乱れる。集中して書いている数日間は、なるべく余計なことを考えたくないと思ってしまう。

 と、こんなことを思って、家に帰って妻に話すと「イチローと一緒ぶってんじゃねえよ!」と厳しくお叱りを受けて魔法がとける。

 イチローさん、刺激をありがとうございました。

週刊朝日  2019年12月6日号

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鈴木おさむ

鈴木おさむ

鈴木おさむ(すずき・おさむ)/放送作家。1972年生まれ。19歳で放送作家デビュー。映画・ドラマの脚本、エッセイや小説の執筆、ラジオパーソナリティー、舞台の作・演出など多岐にわたり活躍。

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