また、前出の住宅特定改修特別税額控除との併用もできないため、いずれの控除を受けると最も減税効果が高くなるかを考えて選択したい。

 この優遇税制を活用する際には“期限がある”ことも覚えておきたい。ファイナンシャルプランナーの井戸美枝氏が話す。

「住宅の改修等に関わる特別控除の多くが、『2021年12月31日までに居住』という条件が付けられています。つまり、その日までに工事を終えて、居住しないと適用されない。優遇税制の廃止が先延ばしにされる可能性もありますが、期限が区切られているものは、その制度をフルに活用できるように逆算して動く必要があります」

 一方で、会社員が加入している雇用保険は毎年、毎月勤労統計が発表された後の8月に給付額が改定される。給付金制度そのものが廃止される可能性はまずないが、高齢者は年齢によって給付額が大きく変わる点には注意したい。

 会社員なら失業した際には退職前6カ月の賃金をもとに「雇用保険の基本手当(失業手当)」がもらえるが、この基本手当は65歳未満の一般被保険者を対象にしたもの。

 65歳以上になると、高年齢被保険者という区分に変わる。一般被保険者は、年齢計算に関する法律で「65歳になる誕生日の前々日まで」と定められているので、前日に失業しても高年齢被保険者の扱いになる。

「この場合は、高年齢求職者給付金として日額50日分(雇用保険加入期間が1年未満は30日分)が一時金として一括で支払われます。しかし、65歳になる前々日に失業して一般被保険者として失業給付を受ける場合には、失業理由によりけりですが、給付日数が240日になることもある。1日の違いで、190日分も給付額に差が出る可能性があるわけです」(井戸氏)

 もちろん、再就職希望者向けの給付であるため、失業を機にリタイアする人は対象外。また、失業給付と年金の“併給”はできない。十分な年金が見込める場合には、65歳以上で失業して高年齢求職者給付金を一括で受け取るほうが得となる。

 それ以前に、60歳以上65歳未満を対象にした給付金制度があることも覚えておきたい。会社員は通常、60歳で定年を迎え、同じ会社で嘱託社員などとして働き続けるケースも多い。この場合は「高年齢雇用継続基本給付」で、下がった賃金の補填を受けることができる。定年前から賃金が75%未満に減ったら定年後賃金の最大15%が給付されるのだ。定年後に失業給付を受け、別の会社に再就職して賃金が下がった場合にも、同様の条件で「高年齢再就職給付」が受けられる。(ジャーナリスト・田茂井治)

週刊朝日  2019年11月15日号より抜粋