東尾修(ひがしお・おさむ)/1950年生まれ。69年に西鉄ライオンズに入団し、西武時代までライオンズのエースとして活躍。通算251勝247敗23セーブ。与死球165は歴代最多。西武監督時代(95~2001年)に2度リーグ優勝
東尾修(ひがしお・おさむ)/1950年生まれ。69年に西鉄ライオンズに入団し、西武時代までライオンズのエースとして活躍。通算251勝247敗23セーブ。与死球165は歴代最多。西武監督時代(95~2001年)に2度リーグ優勝
日本一を決め、胴上げされるソフトバンクの工藤監督=2019年10月23日 (c)朝日新聞社
日本一を決め、胴上げされるソフトバンクの工藤監督=2019年10月23日 (c)朝日新聞社

 5年ぶりに日本シリーズへ進んだもののソフトバンクに完敗で終わった巨人。その敗因を西武ライオンズの元エースで監督経験もある東尾修氏が分析する。

【写真】日本一を決め、胴上げされるソフトバンクの工藤監督

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 日本シリーズはソフトバンクが巨人を4勝0敗で破り、3年連続日本一を達成した。現役時代に西武でともにプレーした工藤公康監督をはじめ、選手の頑張りを心から祝福したい。また、敗れた巨人も、これでリーグ優勝の栄誉が薄れるわけではない。何が足りなかったかを来年への糧として、日本一を目指してもらいたいと思う。

 前回のコラムでも書いたが、圧勝するなら本拠地スタートとなるソフトバンク、巨人が勝つとしたら第7戦までもつれるような展開を予想していた。しかし、4勝0敗となるほど、両軍に大きな戦力格差があるわけではない。少しの局面での差が勝敗の結果に表れたのだと感じる。それを大きな差ととらえるか、わずかな差ととらえるかは人それぞれだ。なぜなら、勢いや置かれた精神状態も野球には影響するからだ。

 日本シリーズはCSと異なり、本拠地と敵地で試合を行う。まず本拠地スタートとなった第1戦、第2戦をソフトバンクがとった時点で、巨人は本拠地初戦となる第3戦を絶対に落としてはいけなかった。流れや勢いを変えるにはそこしかなかったはず。まず、第4戦に先発したエースの菅野智之を第3戦に投げさせられなかったことが悔やまれる。事情は中にいる原辰徳監督や首脳陣しかわからないことだが、腰痛という不安があるにせよ、3戦目にエースが行ければ、また違った気持ちにチームはなれたのではないか。3戦目に投げられれば、第7戦までもつれた場合にも登板のチャンスはあったはずだ。

 ともあれ第3戦は、原監督は継投で乗り切る腹だったはずだ。先発したルーキーの高橋優貴を、どんなに好投しようが三回に下げ、四回から高卒ルーキーの戸郷翔征を起用するゲームプランを描いた。だが、その四回。大舞台で初登板となった戸郷の長所は球威ある真っすぐとカットボールであるはず。制球力よりも勢いを大事にしたい投手だが、捕手の大城卓三の構える位置に首をひねった。

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東尾修(ひがしお・おさむ)/1950年生まれ。69年に西鉄ライオンズに入団し、西武時代までライオンズのエースとして活躍。通算251勝247敗23セーブ。与死球165は歴代最多。西武監督時代(95~2001年)に2度リーグ優勝。

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