新天皇がグローバルな課題としての水に関心をもっていることは、皇室に新たな出発をもたらしそうだ。断言するにはまだ早いかもしれないが、前天皇夫妻が在位期間の大半を通じて、社会の弱者に手を差し伸べてきたように、新天皇は国際社会の弱者の一部、たとえば、容易に水を得ることができない人びとに手を差し伸べようとしている。それによって国際社会の周縁に追いやられた人びとを引き上げようと努めているのだ。

 雅子妃が積極的に皇后としての役割を引き受けようとしていることに、ほとんどの日本人はうれしい驚きを隠せないでいる。しかし、雅子皇后については、覚えておくべきことがある。彼女の夢は幼いころから国に尽くすことだったし、皇后としてその仕事を果たすことは期待してよい。

 しかし、誰もが知るように、彼女は皇太子妃時代にひたすら皇嗣を産むことだけを求められる人としてのありように悩んでいた。願わくは、日本の政治家には、皇室制度に必要となる改革を熟慮するさいに、このことを念頭においてほしいものである。

■平成との継続性

 明仁上皇は戦後憲法下で即位した初の天皇であり、「象徴天皇」の基本モデルをつくった。いつも寄り添っていた美智子上皇后とともに築いたこの範型は、これからも強力に作用するだろう。とりわけ明仁上皇がいわゆる天皇「ロボット論」を排して、天皇は「行動的」であるべきだと示したことは見逃せない。

 5月1日、即位後初のおことばで、徳仁天皇は以前から主張していたように、多くの分野で、上皇によって示された先例にならう旨をあらためて強調した。

 これが令和に期待できる第一のことである。平成との断裂はあるまい。

 とりわけ短期的には持続性のほうが不連続性よりも勝るだろう。

 とはいえ、徳仁天皇が上皇とまるで同じのはずはない。父親を手本にしたいといっても、それは上皇をそっくりまねるというのではあるまい。すでに2018年2月の皇太子時代の誕生日記者会見でも、必要なときには変化を受けいれるとして、「将来にわたり生じる日本社会の変化に応じて公務に対する社会の要請も変わってくることになると思いますし、そういった社会の新しい要請に応えていくことは大切なことであると考えております」と話している。

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