天皇、皇后両陛下 (c)朝日新聞社
天皇、皇后両陛下 (c)朝日新聞社
ケネス・ルオフ教授 (c)朝日新聞社
ケネス・ルオフ教授 (c)朝日新聞社

 世界中が注目する、新天皇が即位を内外に宣言する「即位礼正殿の儀」。令和時代の新しい「象徴天皇」の姿は? 待ったなしの皇位継承問題と皇室典範改正の行方、靖国神社との距離は? 米国の天皇制研究第一人者のケネス・ルオフ氏が特別寄稿した。

【写真】ケネス・ルオフ教授

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■多様性の進展と国家の統一

 即位の前に、徳仁天皇は自分の考えの一端を示した。そこには日本で進む多様化の問題も含まれていた。皇太子として最後の誕生日記者会見では、平成を「人々の生活様式や価値観が多様化した時代」としたうえで、「今後は、この多様性を、各々が寛容の精神をもって受け入れ、お互いを高め合い、更に発展させていくことが大切になっていくものと思います」と語っている。

 一部の日本人、とりわけ最右派にはこうした変化を恐れる者もいるように見受けられるが、これから数十年のうちに、日本が多様化していくことはまちがいない。障がいをもつ人たちは社会の表舞台に出たがっているし、多くの女性がキャリアを望んでいる。LGBTの運動もはじまっている。性的マイノリティの人びとも堂々と生きたいと願っている。さらに、まもなくおこなわれる即位式や大嘗祭、オリンピックのような国家行事が喜ばしいものだとしても、日本には大きな問題がたちはだかっている。

 信頼できる統計学者によると、控えめに見積もっても、日本の人口はこれから数十年のあいだに33%減少しそうだという。近代の平和時に、こうした人口減少はどの国も経験したことがなく、それに伴い何が起こるかは、はっきりわからない。しかし、事態への対処が困難であることは予測できる。

 移民の受けいれにより、人口減にどの程度歯止めをかけるかを決めるのは日本人次第である。とはいえ、日本のとくに都市部を訪れると、日本にはすでに多くのニューカマー(定住した外国人)が住んでいることに気づくはずだ。日本は実際にはふたつの面で多様化しているといえる。個人のライフスタイルはすでに多様化しているのだが、新来外国人もまた日本の多様化を推し進めているのだ。

 もし日本が以前にも増して、ほんとうに多くの移民を市民として受けいれようとしているのなら、現在の主として民族にもとづく国籍の規定は見直す必要がある。どのような生い立ちであろうと、法的な市民権の獲得と同化を前提として国民共同体への加入を受けいれるよう規定を変えていかねばならない。くり返していうが、その将来を決めるのは日本人次第なのだ。

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