だが、すべからく日本人は次の現実に直面することになるだろう。まず、日本の出生率が突然劇的に上向きになって、人口減少問題が解決されることは絶対にあり得ない。人口減少はすでに生じており、その度合いはまさに年を追うごとに大きくなっている。したがって、劇的な人口減少と、そのもたらす結果を緩和するには移民を受けいれるほかないだろう。

 日本社会の多様化はエキサイティングで、さまざまな人に利益をもたらしうる。たとえば日本では、障がい者が公共施設にアクセスできるようインフラが整備されたりして、全般的に何もかも便利になろうとしている。日本がより住みやすい場所になりつつあるのは、たしかではないだろうか。

 同時に、多様性のなかから統一性を築くには、さらなる努力やこれまでとは異なる戦略が求められる。日本の象徴天皇制は日本独特のものと思われがちだが、世界の象徴君主制(イギリスやスペイン、オランダ、その他)とさほど変わらない。だいじなのは皇室をグローバルな脈絡でとらえることだ。象徴王室をもつどの国民国家でも、王室の最大の役割は国家の統一を維持するよう努めることとされる。徳仁天皇は日本の多様化に応じて国家の統一を維持していくには新たなアプローチが必要だと指摘している。招き入れる外国人を含め、次第に多様化する人びとのなかで統一性を構築するために、天皇と皇后は新たな象徴的行動を追求するとみてよいだろう。

■国際的視野の強化

 令和の皇室は、さまざまな問題にたいし、いっそう国際的なアプローチを展開するはずである。前天皇夫妻のおびただしい海外訪問報道の陰に隠れがちだが、じつは新天皇と皇后はより多方面にわたる国際経験を積んできた。

 徳仁天皇は若いころから幅広く水問題に興味をもち、オックスフォード大学での研究がさらにその関心を国際化することになった。清潔な水をいつでも得られる日本人などからすれば、水はありきたりのテーマのようにみえる。しかし、日々、清潔な水を得るのに苦労する世界の10億以上の人たちにとって、水は死活問題なのだ。

 日本では天皇即位に先立ち、徳仁親王の水問題に関する講演集『水運史から世界の水へ』が刊行された。この出版は水という緊急課題に新天皇がいかに熱心かを知る重要な手がかりとなる。環境問題に大きな関心をもつことからみても、新天皇は歴代天皇の歩みを踏襲しながらも、さらに国際的視野をもって活動することになるだろう。

次のページ