待っている報道陣も、入念にカメラを点検するなど緊張感が高まってくる。5分ほど経つと、警備担当者が、

「そのまま。そのままの姿勢で、動かずお待ち下さい」

 と繰り返した。

 午後7時過ぎ、天皇皇后両陛下を乗せた車両が、記者たちがいる方向に曲がって来るのが見えた。歓声が上がる。テレビ局のカメラマンが照明をつけた。

 車は車内灯がつけられ、お二人の様子もはっきりと見えた。雅子さまはフリルのついた洋服に、ゴージャスなティアラ。晴れやかな笑顔で手を振り、その奥では天皇陛下がほほえんでいた。不思議なことだが、お二人と視線が合ったように感じられた。

 両陛下が通り過ぎた後、沿道にいた女性の一人は、「雅子さまはいい顔をされていた。今日は午前5時ごろから起きて、7時には赤坂御所を出ている。何度か着替えもして大変だっただろうに、疲れも見せずにイキイキとされていたね」。

 午前8時半から10時間半も待っていたという埼玉県の大学1年の男子学生(20)はこう話した。

「本当はパレードを見に来るつもりだったんです。皇室の雰囲気を味わいたかったんです。明るい時間帯にも、雅子さま、紀子さま眞子さま佳子さまが通り過ぎるのを見ました。今日は2度、皇族を見られて良かったです」

 35歳の会社員の女性は、

「感動しました。ここに来ればめっちゃいい気がもらえると思って来ました。神が降りて、パワーがあふれていた。今日は午後から雨が上がり、皇居の上に虹が出ていた」

 とうれしそうに話した。

 横浜市から来たという村上園子さんは、10年ほど前、横浜市の「こどもの国」で撮った、上皇ご夫妻(当時は天皇皇后両陛下)や天皇皇后両陛下(当時は皇太子ご夫妻)、秋篠宮ご一家らが一緒に写った写真(添付)を見せてくれた。

「今日はバスケットボールをしている息子を撮るために買ったニコンのカメラで撮りました。雅子さまのお姿を生で見たいなって思って。11月10日に延期になったパレードは混むでしょうから、今日はすいていてよかったかも」

 ほんの一瞬とはいえ、雅子さまをはじめ、多くの皇族を見ることができた人たちは、口々にうれしい感想を漏らしていた。(本誌・上田耕司)

※週刊朝日オンライン限定記事

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上田耕司

上田耕司

福井県出身。大学を卒業後、ファッション業界で記者デビュー。20代後半から大手出版社の雑誌に転身。学年誌から週刊誌、飲食・旅行に至るまで幅広い分野の編集部を経験。その後、いくつかの出版社勤務を経て、現職。

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