韓国のセックスグッズ産業が日本とは全く違う方向に急成長している中で、今、リアルドールに関する裁判結果が話題を呼んでいる。リアルドールとは、日本ではラブドールと呼ばれているもので、リアルな質感と重量感を持つ女性の人形だ。1体100万円以上の高級なものもあり、男性の射精産業の一角を担っている。このリアルドールを、韓国の業者が輸入したところ、公序良俗を乱すという理由で、税関で止められた。業者は結論を不服として裁判を起こし、結果的に最高裁で業者の言い分が通ったのだった。

 しかし、本当の「闘い」はそこから始まったのだった。この裁判結果に女性たちが抗議の声をあげたのだ。曰(いわ)く、リアルドールは女性のモノ化を促進し、性差別意識を深め、女性の尊厳を傷つけるものである、と。近々リアルドールに抗議する大きなデモが行われる。

 女性がモノ化され、幼児への欲望がフツーに商品化されるような日本社会にいると、韓国社会の性産業はまるで別世界に見える。リアルドールを社会は許容すべきか否か。女性が安心して主体的に楽しめるセックスグッズが街中の路面店に次々に生まれる韓国社会が見せる高度な性の議論に、私たちが学ぶものは大きい。

週刊朝日  2019年10月4日号

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北原みのり

北原みのり

北原みのり(きたはら・みのり)/1970年生まれ。女性のためのセクシュアルグッズショップ「ラブピースクラブ」、シスターフッド出版社「アジュマブックス」の代表

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