地銀の努力不足や地方経済の地盤沈下といったせいにするのでは、あまりにも安易であり酷だ。黒田東彦(はるひこ)日銀総裁は17年12月に地方銀行の収益に関して、「低金利環境が継続すると銀行の貸し出し利ざやが縮小し収益に影響を及ぼす」と述べたそうだが、「低金利」という言葉でごまかし、責任回避を狙っているように思える。

 地銀の不振は低金利のせいではなく、日銀のせいだ。異次元緩和さえしなければ、長短金利差がある程度残り、ここまで経営不振にはならなかったはずだ。

 異次元緩和の副作用については予想でき、私もかなり前から指摘していた。

 異次元緩和の理由を、政府は「デフレ脱却のため」としているが、実際には「政府の資金繰り倒産回避のため」だ。資金繰り倒産を避けるための政府の先延ばし策が、地銀の経営を揺るがし始めているのだ。

 危機を先延ばしする「飛ばし」は、どこかで無理が顕在化する。異次元緩和を中止すると長期金利が急騰し、国の資金繰りが危機に陥る。

 多くの地銀が危なくなったときに、日銀は国の資金繰りが苦しくなるのを承知で、地銀を救うのだろうか? それとも金融システム危機が起きるのか? 私がXデーを心配する理由の一つだ。

週刊朝日  2019年10月4日号

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藤巻健史

藤巻健史

藤巻健史(ふじまき・たけし)/1950年、東京都生まれ。モルガン銀行東京支店長などを務めた。主な著書に「吹けば飛ぶよな日本経済」(朝日新聞出版)、新著「日銀破綻」(幻冬舎)も発売中

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