日産は仏自動車大手ルノーに、株式の43%を握られている。新たな社長は、大株主であるルノーの意向にも配慮しなければいけない。

 西川社長はゴーン前会長に引き立てられてきたが、前会長が逮捕されると一転して厳しく批判するようになった。日産の独立性を高めるため、ルノーと交渉していたが、自らの報酬問題で早期辞任することになった。西川社長は引責辞任について明確には認めなかったが、想定していたよりも早いタイミングでの辞任になったことは認めた。その上でゴーン前会長らへの思いについて、次のように述べた。

「今回は次への準備の節目として、本来取るべき責任はどこで取るかと言うことで、一番早いタイミングを選ばせていただいた。ゴーン前会長とケリー前代表取締役については、こういう会社の状態を作り出してしまった。お客様にも心配を掛け、社員にもいらぬ苦労をさせている。こういう状態にしたのが一番の罪だろうし、本当に悔いていただきたいと思っている。そういう形での謝罪なり表明は、一回も聞いたことがありません。そこを是非、強く感じてもらいたい」

 ルノーは日産への経営関与を強めようとしている。新たな社長はルノー側の要求をどうかわしていくかが問われるが、西川社長の早期辞任で日産側の交渉力が低下する可能性もある。今回の会見で、会社側は一連の問題に一区切りついたと強調したが、日産の混迷はかえって深まっている。(本誌・羽富宏文、池田正史、多田敏男)

※週刊朝日オンライン限定記事

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池田正史

池田正史

主に身のまわりのお金の問題について取材しています。普段暮らしていてつい見過ごしがちな問題を見つけられるように勉強中です。その地方特有の経済や産業にも関心があります。1975年、茨城県生まれ。慶応大学卒。信託銀行退職後、環境や途上国支援の業界紙、週刊エコノミスト編集部、月刊ニュースがわかる編集室、週刊朝日編集部などを経て現職。

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