コンゴ民主共和国での予防摂取の様子=仲佐医師提供
コンゴ民主共和国での予防摂取の様子=仲佐医師提供

 中部アフリカに位置するコンゴ民主共和国北キブ州周辺で、エボラウイルス病(エボラ出血熱)が大流行(アウトブレーク)している。昨年8月から1年以上続き、今も勢いは衰える気配を見せない。この状況を受け、世界保健機関(WHO)は7月18日に「緊急事態(PHEIC※)」を宣言した。

 8月26日現在、発症者は2980人、死亡者は1965人。医療従事者155人への感染も明らかになり、死亡率は65・9%にのぼる。隣国ウガンダ共和国での発生も確認された。これは、2013年に始まったギニアなど3カ国での史上最悪の流行(感染者2万1724人、死者8641人。15年1月21日現在)に次ぐ規模になっている。

 エボラウイルスは、1976年にコンゴ民主共和国(当時の国名はザイール)のエボラ川流域などで発見されたウイルスで、現在、5種類が確認されている。感染経路はまだ完全に分かっていないが、ウイルスを持つコウモリやサルなどの動物から人に感染すると言われている。感染者の嘔吐(おうと)物や便、血液などに触れることでも感染するが、空気感染はしない。

 今回、国立国際医療研究センター国際医療協力局から、「コンゴ保健省次官付け顧問・国際協力機構(JICA)専門家」として現地に派遣された仲佐保(なかさ・たもつ)医師は、「コンゴの一部では今も死者を土葬する際、遺族のなかには遺体を洗ってからハグし、キスをする人たちがいる。こうした風習が感染を広げている一因になっている」と話す。

 症状は、38度以上の発熱、頭痛・関節痛、下痢、嘔吐など。意外だが、出血が見られるのは1割程度。「エボラ出血熱」では誤解を招くことから「エボラウイルス病」に改称された。死因は嘔吐と下痢による脱水、免疫不全、出血。“感染すると死ぬ”というイメージが強いが、実際は「早期に見つけて、(脱水を防ぐ)点滴などをしっかりやれば助かる」(仲佐医師)という。

 そして、今回の流行への対策で注目を集めているのが、ワクチンと治療薬だ。

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首都や隣国への広がりを懸念