記録的な大雨に見舞われ冠水した佐賀県大町町 (c)朝日新聞社
記録的な大雨に見舞われ冠水した佐賀県大町町 (c)朝日新聞社
この10年間で台風・豪雨などの被害額が多かった自治体【東日本】 (週刊朝日2019年9月13日号より)
この10年間で台風・豪雨などの被害額が多かった自治体【東日本】 (週刊朝日2019年9月13日号より)
この10年間で台風・豪雨などの被害額が多かった自治体【西日本】 (週刊朝日2019年9月13日号より)
この10年間で台風・豪雨などの被害額が多かった自治体【西日本】 (週刊朝日2019年9月13日号より)
2メートル以上の浸水被害を受ける住民の割合が多い自治体 (週刊朝日2019年9月13日号より)
2メートル以上の浸水被害を受ける住民の割合が多い自治体 (週刊朝日2019年9月13日号より)

 どこに住んでいても自然災害のリスクからは逃れられない。編集部では、政府統計や、研究機関などが公表しているデータから、各自治体の水害の危険度を調べた。

【表を見る】この10年間で台風・豪雨などの被害額が多かった自治体/2メートル以上の浸水被害を受ける住民の割合が多い自治体



 記録的な大雨に見舞われた九州北部では、佐賀、福岡、長崎などの広い範囲で浸水し、死者や油の流出など大きな被害が出た。

 気象庁によると、停滞する前線に暖かく湿った空気が流れ込み積乱雲が次々と発生し、帯状に並んで雨を降らせ続ける「線状降水帯」が発生したとの見方だ。

 こうした大雨や台風などによって近年、川が氾濫(はんらん)するなど、大きな被害が出ている。そこで本誌編集部は、国土交通省が毎年公表している「水害統計調査」の過去10年分のデータを集計し、東日本、西日本の自治体ごとの被害額をまとめた。

 東日本では、東京23区内でも北区や渋谷区、板橋区などで頻繁に水害が起きている。88億円の被害が出ている北区では、2010年にゲリラ豪雨で幹線道路が冠水。15年に渋谷に降ったゲリラ豪雨では、地下鉄などの渋谷駅の改札付近が冠水し、駅構内に大量の水が流れ込んだ。災害地理学に詳しい山崎憲治・元岩手大教授はこう見る。

「東京や名古屋などはもともと川の洪水によって造られた土地の上にあるため、水が多く出やすい地域でもある。コンクリートで覆ってしまったために雨が地下に浸透せず、下水で受けることになりますが、豪雨が襲うと処理できなくなることがあります。あふれ出た水が地下街に流れ込むとなると、生き死にのリスクにさらされることにもなります」

 被害額が最も多かったのは、茨城県常総市だ。15年9月、関東地方を襲った豪雨で鬼怒川の堤防が200メートルにわたり決壊。市面積の3分の1に当たる約40平方キロが浸水、5千棟以上が全半壊、2人が死亡した。

 堤防の決壊がなぜ起こるのか。京大名誉教授で河川工学が専門の今本博健さんはこう指摘する。

「以前から治水対策をダム優先で進めてきた結果、より生活者に身近なところにある堤防を強化することが遅れてきたという背景がある。国は00年ごろから堤防強化にも力を入れ始めたが、地方自治体が管理している河川では補強のための予算がなく、多くの河川で補強が十分にできていない現状がある」

 西日本に比べ、台風が少ない東北地方だが、16年8月に上陸した台風10号による被害は甚大だった。岩手県岩泉町では小本川が氾濫し、高齢者グループホームの入所者ら計25人が犠牲となった。

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吉崎洋夫

吉崎洋夫

1984年生まれ、東京都出身。早稲田大学院社会科学研究科修士課程修了。シンクタンク系のNPO法人を経て『週刊朝日』編集部に。2021年から『AERA dot.』記者として、政治・政策を中心に経済分野、事件・事故、自然災害など幅広いジャンルを取材している。

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