「えらい真剣な表情で、紙にまで書いて説明するので、まずいと思ったので、なだめました。出所後の青葉容疑者に会った知人から聞いたのですが、『(自分の作品を)パクったヤツに復讐する』と刑務所と同じように話していたそうです。本当に青葉容疑者は刑務所で話していたことを出所後、やってしまった。まさか、やるとは思いもしなかった」

 2012年、青葉容疑者の起こした強盗事件の判決には<仕事上理不尽な扱いを受けるなどして社会で暮らしていくことに嫌気がさした>という一般的によくあることが動機であったとして、包丁でコンビニエンスストアに押し入り、カネを奪った強盗事件に<犯行の態様は危険かつ悪質なもの(中略)>と指摘している。

 ささいなことでも、とんでもないことを、しでかしなかねない可能性を示唆している。事件当時第2スタジオで仕事をしていて命が助かった社員の1人がお盆の最中、現場近くの献花台を訪れた。苦しい胸の内を言葉少なにこう語ってくれた。

「一緒に働いていた同僚が一瞬の間に命を奪われた。思い出すと涙が止まらなくなる。まだやけどに苦しむ同僚もいて、すごい炎の中、命からがら逃げ惑ったことが頭から離れません。青葉容疑者は本当に許せない。亡くなられた同僚のためにも京アニでまたいい作品を作りたいのですが、なかなか、前向きになれなくて」

(今西憲之)

※週刊朝日オンライン限定記事

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今西憲之

今西憲之

大阪府生まれのジャーナリスト。大阪を拠点に週刊誌や月刊誌の取材を手がける。「週刊朝日」記者歴は30年以上。政治、社会などを中心にジャンルを問わず広くニュースを発信する。

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