ギター:内田勘太郎(写真左)/歌・ハーモニカ:甲本ヒロト
ギター:内田勘太郎(写真左)/歌・ハーモニカ:甲本ヒロト
●ブギ連『ブギ連』アリオラ/ソニー・ミュージック CD BVCL-960●同12インチアナログ盤(完全生産限定、7インチアナログ盤付き) BVJL-32~33
●ブギ連『ブギ連』アリオラ/ソニー・ミュージック CD BVCL-960
●同12インチアナログ盤(完全生産限定、7インチアナログ盤付き) BVJL-32~33

 ザ・クロマニヨンズの甲本ヒロトと憂歌団の内田勘太郎によるユニット、ブギ連のデビュー・アルバム『ブギ連』が抜群に面白い。カヴァーでもコピーでもなく、オリジナルのブルースに取り組んだものだ。

【デビュー・アルバム『ブギ連』のジャケット写真はこちら】

 ザ・ブルーハーツ、ザ・ハイロウズを経てザ・クロマニヨンズで活動中の甲本は、スリムな体つきからは想像できないエネルギッシュなパフォーマンスで知られる。一方の内田は技巧派のギター奏者で、ボトルネック奏法への評価が高い。

 二人の出会いはザ・ブルーハーツ時代に甲本が憂歌団をイベントのゲストに招いたのがきっかけ、というから30年以上昔にさかのぼる。昨年、現在、内田が居住する沖縄での再会をきっかけに、ユニットの結成とアルバム制作が実現することになったという。

 甲本は中学時代に買ったザ・ローリング・ストーンズのアルバム『アウト・オブ・アワ・ヘッズ』で、彼らがカヴァーしていたブルース曲に興味を抱いて以来、ジョン・リー・フッカー、マディ・ウォーターズ、リトル・ウォルターといった巨人らから、ブルースを探求してきたという。

 内田もブルースを追求し、木村充揮とともに憂歌団を結成。グループ名は“ブルース・バンド”を訳したもの。スリーピー・ジョン・エステスやマディ・ウォーターズらとも共演した経験がある。

 面白いのはブギ連の作曲と録音のプロセス。19世紀後半、米国のアフリカ系アメリカ人の間で発生したとされるブルースは基本的なスタイルがあり、歌詞も常套(じょうとう)的な表現が繰り返し引用、継承されてきた。ブルースの名曲にはその起源となる曲があり、名曲から数々の派生曲が生まれた。

 ブギ連はそうしたブルースの伝統や手法にならい、ブルースの名曲を下敷きに、新たな着想による歌詞を持ったオリジナル曲を作った。しかも曲を作り上げてからではなく、即興性を重視し、曲を完成するに至る過程をそのまま収録したアルバム、と語っている。

 “ブギ連”というユニット名だが、ジョン・リー・フッカーのデビュー曲で、ロックン・ロールにも多大な影響を及ぼした名曲「Boogie Chillen」に取り組んだことに由来する。

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小倉エージ

小倉エージ

小倉エージ(おぐら・えーじ)/1946年、神戸市生まれ。音楽評論家。洋邦問わずポピュラーミュージックに詳しい。69年URCレコードに勤務。音楽雑誌「ニュー・ミュージック・マガジン(現・ミュージックマガジン)」の創刊にも携わった。文化庁の芸術祭、芸術選奨の審査員を担当

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幕開けは「あさってベイビイ」