ドキュメンタリー映画「主戦場」のポスターの横に立つミキ・デザキ監督 (c)朝日新聞社
ドキュメンタリー映画「主戦場」のポスターの横に立つミキ・デザキ監督 (c)朝日新聞社
「主戦場」に抗議する会見を開いた藤岡信勝氏(左)ら (c)朝日新聞社
「主戦場」に抗議する会見を開いた藤岡信勝氏(左)ら (c)朝日新聞社

 慰安婦問題を扱ったドキュメンタリー映画「主戦場」が、一部の映画館でロングランになっている。出演者が上映禁止や損害賠償を求めて提訴するなど、賛否両論あるなかで改めて注目されている格好だ。

 4月20日に東京・渋谷のシアター・イメージフォーラムで公開されて以来、同館では異例のロングランになっている。ほかにも全国40カ所以上で上映され、延長やアンコールを予定しているところもある。

 配給会社「東風」の担当者はこう説明する。

「公開時は、多くのメディアに露出していたわけではありませんでした。インターネットを中心に、『これは見なければならない作品』といった反響が広がりました。賛否が大きくわかれた意見もあり、関心を呼んだのだと思っています」

 主戦場を巡っては、「新しい歴史教科書をつくる会」の藤岡信勝副会長やケント・ギルバート氏ら出演者5人が、日系米国人のミキ・デザキ監督と東風に、上映の中止と総額1300万円の損害賠償を求めて、東京地裁に6月19日、提訴した。

 原告側は、「目的が商業映画として一般に公開することにあったことを知っていたら、私たちがインタビューを受けることは決してなかった」などとして、肖像権の侵害を主張。「歴史修正主義者」といったレッテルを張られたことも、名誉毀損(きそん)に当たるとしている。

 これに対しデザキ氏は、上智大学の大学院時代に学術目的のために取材をして、ドキュメンタリー映画を作成したと説明している。提訴に先立って、ネット上で、「もし完成した映画の出来が良ければ、映画祭への出品や一般公開も考えていると伝えていました」とコメントした。取材対象者には、出演承諾書(合意書)に署名してもらい、日本での公開についてもメールで知らせたと主張している。

 裁判沙汰になったことで、ネット上ではデザキ氏らへの批判が高まっているが、映画が改めて注目されるきっかけともなった。

 長年テレビや映画でドキュメンタリー製作を手掛けてきた大島新さんは、こう指摘する。

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