吉本興業は持ち株会社である吉本興業ホールディングスの会長、社長らの連名で、コンプライアンスの徹底と反社会的勢力の排除に関する「決意表明」を公表した。主な内容を抜粋して紹介しよう。

「この度の所属タレントの件によりファンの皆様及び関係先各位には、多大なるご心配とご迷惑をおかけしておりますことを、まずは心よりお詫び申し上げます。弊社はこれまで下記のように全社的にコンプライアンスの徹底と反社会的勢力の排除に取り組んでまいりましたが、この度の件を受け、社員・タレントが一丸となってコンプライアンス遵守の徹底を図ります。本件のような事態を起こしてしまった結果からして、これまでの弊社におけるコンプライアンスへの取組みや方法では十分にカバーしきれない面があったことは否めず、弊社はこの点を認め、真摯に向き合い反省します。二度とこのような事態が起こらないよう、改めてタレントに対するヒアリングを実施し、そこでコンプライアンスに反する関係や行動が判明し疑義が生じた場合には、徹底的に明らかにしたうえで速やかに対処いたします」

 不祥事が判明すれば、公式HPを通じて適切かつ速やかに公表するとしている。

 芸能界を巡っては、暴力団ら反社会的勢力との関係が長年問題になってきた。これについては、吉本興業も認めている。

「長い芸能の歴史において反社会的勢力との関係が取りざたされたことは事実であり、このことは過去の当社においても例外ではなかったものと考えます」

 その上で、現在の吉本興業においては、あらゆる反社会的勢力との関係は一切なく、今後も関わりをもたないと宣言。決意表明の最後はこう締めくくられている。

「一連の報道されている件を含め、約6000人の所属タレント及び約1000人の社員のあらゆる行いについてはすべて当社の責任です。繰り返しとなりますが、当社グループ全体でさらなるコンプライアンスの徹底に全力を尽くす覚悟であり、ここにその決意を表明いたします」

 長年お笑い界をリードしてきた吉本興業が、こうした異例の決意表明を出さざるを得なかったのは、会社側の問題も大きい。振り込め詐欺グループの宴会を巡っては、当初は金銭授受はなかったといううその説明をもとに、一部の芸人は厳重注意という甘い処分にとどめていた。会社側の調査は不十分で、第三者委員会といった真相を究明する枠組みもできていない。

 対応が後手に回る中、芸人が出演するテレビ番組のスポンサーが次々に降板。謹慎処分となっている「雨上がり決死隊」の宮迫博之さんらがレギュラー出演する番組が差し替えられるなど、テレビ界にも大きな影響を与えている。

 問題がどこまで波及するのかも見通せない。吉本興業は内部調査の進み具合を公表しておらず、今後新たにスリムクラブのような事例が発覚する可能性がある。会社側は今回の「決意表明」で区切りをつけたいようだが、改めて調査の徹底と説明責任が問われそうだ。(本誌・多田敏男)

※週刊朝日オンライン限定記事