「日本の戯曲は打ち上げ花火」シルビア・グラブが語る芝居 〈週刊朝日〉|AERA dot. (アエラドット)

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「日本の戯曲は打ち上げ花火」シルビア・グラブが語る芝居

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菊地陽子週刊朝日
シルビア・グラブ/1974年生まれ。東京都出身。父がドイツ系スイス人、母が日本人。2008年「レベッカ」ダンヴァース夫人役で菊田一夫演劇賞受賞。12年、「国民の映画」で読売演劇大賞優秀女優賞受賞。夫は俳優の高嶋政宏 (撮影/写真部・片山菜緒子)

シルビア・グラブ/1974年生まれ。東京都出身。父がドイツ系スイス人、母が日本人。2008年「レベッカ」ダンヴァース夫人役で菊田一夫演劇賞受賞。12年、「国民の映画」で読売演劇大賞優秀女優賞受賞。夫は俳優の高嶋政宏 (撮影/写真部・片山菜緒子)

 幼い頃は、ずっと、“歌い手”になりたいと思っていた俳優のシルビア・グラブさん。オペラ歌手でもミュージカル歌手でも、ポップシンガーでもなんでもよかった。日本で通っていたインターナショナルスクールで、ミュージカルに出演することになった。歌って踊ることの魅力に取り憑かれた。ボストン大学で声楽を学び、日本に帰国。最初の5年間は、ショーやミュージカルを中心に活動した。当時は“ミュージカル”と音楽のない普通の芝居、いわゆる“ストレートプレイ”とは、全く違うものだと思い込んでいた。

 転機が訪れたのは、28歳のときだ。

「演出家のG2さんから、ストレートプレイに出てみないかというお誘いをいただいたんです。でも私は、台詞だけのお芝居をするのは不安でした。歌って、すごく情報量が多いんです。言葉にプラスしてメロディーもあるから、いろんな感情を乗せやすい。英語を日本語に訳したとき、情報量を削らないと音にはまらないので、私は歌うとき、日本語詞だけではなく英語詞にある感情も乗せて、歌うようにしていました。そういう自分なりのやり方に慣れていたせいか、舞台に立っていても、『早く歌にならないかな』と思っていたこともあるほどです(笑)」

 とはいえ、元来が“飲みニケーション好き”。共演者やスタッフと、お酒を酌み交わしながら、芝居談議にふけることは楽しかった。

「お芝居に対する苦手意識も、少しずつですが解消されたような気がします。以来、ミュージカルにこだわりすぎて、役者としての成長を止めてしまうのは良くないと、積極的にストレートプレイのお仕事もお受けするようにしたんです」

「レ・ミゼラブル」や「レベッカ」などのグランドミュージカルは、全国を回る長丁場。新たな演出家とのタッグが実現したのは、2011年、三谷幸喜さんの「国民の映画」で、だった。この作品で彼女は、読売演劇大賞の優秀女優賞を受賞した。

「役者は、一生成長していかなければ」と考えるシルビアさんが、今また新たな課題にぶつかっている。昨年紫綬褒章を受章した劇作家で演出家のケラリーノ・サンドロヴィッチ(KERA)さんが、1998年に書き下ろした、16年にわたる女性同士の心の機微を描く密室劇「フローズン・ビーチ」。演出家に鈴木裕美さんを迎え、新たに上演されるこの舞台に、出演することになったのだ。

「日本オリジナルの戯曲って、打ち上げ花火のようで、『こんなに素晴らしいのになぜ一度しか上演しないの?』って思うことが多い。今回は、この名作が新演出される機会に呼んでいただいて嬉しい半面、劇団員の方に当て書きされた役を私が演じることができるのか、不安でもあります。でも、KERAさんの台詞には、歌のようなリズムとメロディーとハーモニーがある。それらの言葉を、心を込めて歌っていけたらと」

(取材・文/菊地陽子)

週刊朝日  2019年6月28日号


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