右肩痛で2軍調整が続く巨人の岩隈久志投手も同じだ。日々一進一退を繰り返す中で、少しでも段階が上がっていることを実感させる取り組みが必要になる。本人がいつまでも慎重になっていてはいけないし、首脳陣はどのタイミングで1軍のマウンドを経験させるかを考えているだろう。本人が覚悟を決める瞬間を球団が見極め、作ってあげることだ。

 ベテランばかり特別扱いはおかしいとの意見もあるが、長くリハビリを続けた人間にしかわからない苦悩や葛藤にどうチームとして寄り添えるか。見切り発車でも1軍のマウンドに立たせることは、決して無駄ではない。実績を積んだ投手だからこそ、自分の球に対する打者の反応から、足りない部分や、投球スタイルの変化を強く意識できるようになる。1試合で劇的に変われることだってある。その1試合は決して無駄ではない。

 開幕から2カ月。1軍で戦い続ける選手には疲労も出る。そういった時こそ、ベテランの力は必要になる。

週刊朝日  2019年6月14日号

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東尾修

東尾修

東尾修(ひがしお・おさむ)/1950年生まれ。69年に西鉄ライオンズに入団し、西武時代までライオンズのエースとして活躍。通算251勝247敗23セーブ。与死球165は歴代最多。西武監督時代(95~2001年)に2度リーグ優勝。

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