「国有地を買い取っての小学校建設は、おそらくはじめてなので通常ではない」

 さらに弁護人が近畿財務局とのやり取りを詳しく聞くと、またも検察側は「近財とのやりとり、主尋問で聞いていない」「関連性がない」を連発して審理をストップさせた。

 すると弁護人は、あきれたように「そんなに近畿財務局のことを聞かれるのが嫌なんですかね」と言った。またも裁判所は合議して、検察側の異議は棄却。

 さらに弁護人が職員と近畿財務局が情報交換した相手の名前を問うと今度は、裁判所が「ちょっと待ってください」と休廷を宣言。

「関連性は超えている」と次の質問を認めなかった。

 これらは2017年の流行語にもなった「忖度」なのか。籠池被告も憮然とした表情で聞いていた。元東京地検検事の落合洋一弁護士は検察側に異議連発にこう疑問を呈した。

「森友学園の事件は、小学校の許認可や国有地の売却について国会でも大きな問題になったように、論点が多岐にわたる。ある程度、範囲を広げての尋問は認められるべきかと思います。それを主尋問と聞いてない、聞くなと言うと弁護士は何も聞けない」

 法廷が終わった後、籠池被告の弁護人はこう言い放った。

「忖度裁判ですよ。裁判所や検察が、こんなことでいいのか」

 一方、森友学園への国有地売却を巡り、売却額を公開しなかった国の対応を違法とし、大阪府豊中市議が損害賠償を求めた訴訟で、大阪地裁は5月30日、慰謝料など3万3000円の支払いを命じた。

「公表されるべき情報で、不開示には当たらないと容易に判断できた」と市議側の訴えを認めた格好だが、国が約8億円を値引きして売却した根拠である地下のごみの記述を不開示にした点には踏み込まず、「適法」と判断した。

 訴えた豊中市議は会見で「国への忖度した判決だ」と不満そうに語り、控訴する方針という。

 今後も森友学園を巡る裁判で「忖度」が続くのだろうか。(今西憲之)

※週刊朝日オンライン限定記事

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今西憲之

今西憲之

大阪府生まれのジャーナリスト。大阪を拠点に週刊誌や月刊誌の取材を手がける。「週刊朝日」記者歴は30年以上。政治、社会などを中心にジャンルを問わず広くニュースを発信する。

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