5月14日には、東京五輪に備えて初めて創設された部隊が発足した。重要施設が集中する沿岸警備を強化するため、サブマシンガンなどを携行する警視庁の「WRT(臨海部初動対応部隊)」だ。「選手がテロリストに襲撃された1972年ミュンヘン五輪の悲劇は絶対に繰り返してはならない。夜間でも徹底して不審な兆しを洗い出していく」(警視庁幹部)

 東京五輪の立候補ファイルによれば、警備には警察官2万1千人、民間警備員1万4千人が従事する。警察官はテロ警戒や要人警護に注力し、民間警備員は主に会場の入退場管理や内部の警戒を担当する。

 懸念されていたのは警備員不足だ。「警備会社は期間中も企業や住宅向けの通常業務があり、技術を持っている人員を大量に動員することは大手でも難しい」(警備会社関係者)

 そこで警備会社の共同企業体が昨年設立された。設立メンバーは14社、最終的に100社超が参加する。

 この民間警備員には高いレベルが求められると指摘するのが、作家で五輪招致成功時の東京都知事の猪瀬直樹氏だ。民間警備員の歴史と現状を取材した『民警』の著書がある。

「民間警備員は日本全国で100万人いる。12年ロンドン五輪の際には銃器を携行している民間軍事会社員が警備にあたった。東京五輪でも、顔認証などのIT、警察との迅速な情報共有など、民間警備の高度化を早急に図る必要がある」

 そのほか、どんな対策があるのだろうか。日大の安部川教授は言う。

「日本に武器を持ち込むのはそもそも難しい。企てるなら、日本国内で武器を製造するしかない。テロに関するどんなわずかな情報でも収集し、国内に浸透しているテロリストをあぶり出し、逮捕していくしかない。実際に16年リオデジャネイロ五輪の開幕2週間前、テロを企てたとして10人が逮捕されている」

 リオ五輪の例では、情報機関がテロの端緒情報を犯行前に入手。大惨事を未然に防ぐことに成功した。

 それでも、私たちが実際にテロに遭ってしまったらどう行動すべきだろうか。安部川教授は次の2点を心掛けておくことを勧める。

・爆弾テロは2度3度ある
・逃げ込む場所を探す

 心を落ち着かせて行動することが重要だ。(本誌・羽富宏文、秦正理、緒方麦)

週刊朝日  2019年6月7日号

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秦正理

秦正理

ニュース週刊誌「AERA」記者。増刊「甲子園」の編集を週刊朝日時代から長年担当中。高校野球、バスケットボール、五輪など、スポーツを中心に増刊の編集にも携わっています。

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