またシニアが自己肯定感を保つには、自分の能力を生かせる場所を自由に選んでいくことが大切だという。

「定年退職後に新しい勤め先で働き始めたり、あるいはサークル、NPOに参加したりと、皆さんいろいろあると思います。でも、一回入ったらそこでずっとがんばらなければならないなどという決まりはありません。なんだか人づきあいがうまくいかないな、なんかここでは自分の力が発揮できていないなという違和感を感じたときは、関わるコミュニティーを選び直してもいいんです。まずは自分自身に“活躍の場”を与えることが大事なのですから」

 そして自分を肯定する意識を育むためには「他人と比較すること」と「過去を振り返ること」をやめたほうがいいと中島さんは言う。

「年をとっても明るく楽しそうに生きている人、毎日幸せそうに生きている人を見ては、『自分の人生はサエないなあ』と自分を卑下することに何の意味もありません。他人はスゴくて、自分はいつもダメ。そんなふうに考える習慣も捨てることです」

 自分からわざわざ劣等感を持たないこと。もし昔の同僚の近況が伝わってきても、

「『うん、なるほど。以上、マル』と流していけばいい。そこでそれをわざわざ受けとめたりするから、やっかいな感情が生まれるのです」

 そして、“変えられない過去”に心をとめないことも大事。

「過去の失敗をイジイジ振り返っても、過去はもう絶対に変えることはできない。そのことにまずは自分自身で納得してください。そして考えても仕方のないことは『ま、いいか』と、手放すことです。私たちの脳は『ま、いいか』と納得したことに関しては自然と忘れていくようにできています。次の成長につながるポイントは頭の中に残してもいいですが、それ以外のつまらないことは深追いしないことです」

 自分がなるべく前に進めるように“考えるクセ”をつけていく。それが中島流自己肯定感アップ術。

「肝心なのは、感情を大きく上下動させないように心がけることです。何があっても『一喜一憂しなさんな』。そう自分に言葉をかけて、いつもフラットな状態でいられるようにしましょう。喜びすぎたり、落ち込みすぎたりを繰り返していると自分自身が疲弊してしまうだけですからね」

 かわって北海道・十勝むつみのクリニック院長で精神科医の長沼睦雄さんが教えてくれたのは、「マイナスの気や感情を逆転させるタッピング法」だ。長沼さんは日本では数少ないHSPの臨床医。HSPとはHighly Sensitive Personの略で、直訳するなら「敏感すぎる人」のこと。

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