昨年12月末時点で、日銀は発行済み国債の約43%を保有している。保有比率の高さは世界の中央銀行の中でも突出。一時は年間国債発行額の80%近くを購入していた。計画経済での価格形成だ。

 麻生太郎財務大臣はよく「長期金利がゼロ近くなのは日本が信用されている証拠だ」と言うが、とんでもない。それは市場経済で国債が購入されているなら言えることだ。

 日銀がいつまでもモンスターであり続けられる状態は、計画経済の成功を意味するが、私には想像できない。市場経済ではひずみが小さいうちに、市場参加者によって調整が頻繁に行われる。計画経済では微調整が行われにくく、それが大きなひずみをもたらす。

 だからこそ私は、日本の株式や国債の市場の将来に強い恐れを抱いている。日本はいまだに資本主義国家だと誤解している人が多い。日本の低成長ぶりを見て、「資本主義は終わった」などと言う人もいる。日本は計画経済だからこそ、この低迷に陥っているのだ。

週刊朝日  2019年5月31日号

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藤巻健史

藤巻健史

藤巻健史(ふじまき・たけし)/1950年、東京都生まれ。モルガン銀行東京支店長などを務めた。主な著書に「吹けば飛ぶよな日本経済」(朝日新聞出版)、新著「日銀破綻」(幻冬舎)も発売中

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