動物写真家・岩合光昭さんが見つけた“いい(こ)”を紹介する「今週の猫」。今回は、ラトビア・ヴァルサスの「食べていいか猫(にゃ)」です。

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 バルト海に面した小国ラトビア。500キロにわたって続く海岸線に、昔ながらの素朴な漁村を見つけた。

 小舟で沖に出ていた漁師が浜へ戻ってくる。売り物であろう獲れたての小魚が無造作に放られた舟底に、猫が一匹するりと入り込み、魚を食べはじめた。漁師も気づいたが、やさしい笑顔で見守っている。彼の視線を感じたのか、ふと頭を上げた猫が、いいの?と尋ねるような顔をした。友好関係が築かれていないと生まれない穏やかな空気に、僕も笑顔になった。

デジタル岩合
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週刊朝日  2019年5月3日‐10日合併号

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岩合光昭

岩合光昭

岩合光昭(いわごう・みつあき)/1950年生まれ。動物写真家。1980年雑誌「アサヒグラフ」での連載「海からの手紙」で第5回木村伊兵衛写真賞を受賞。1982~84年アフリカ・タンザニアのセレンゲティ国立公園に滞在。このとき撮影した写真集『おきて』が全世界でベストセラーに。1986年ライオンの親子の写真が、米「ナショナルジオグラフィック」誌の表紙に。94年、スノーモンキーの写真で、日本人として唯一、2度目の表紙を飾る。2012年NHK BSプレミアムで「岩合光昭の世界ネコ歩き」のオンエア開始。著書に『日本のねこみち』『世界のねこみち』『岩合光昭写真集 猫にまた旅』『ふるさとのねこ』『ネコを撮る』『ネコへの恋文』など多数。初監督作品となる映画「ねことじいちゃん」のBlu-rayとDVDが発売中。

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